家では子供だけでなく、
十数匹の犬猫が放し飼いされていた
朋美と忍はそれなりに愛し合っており、人差し指にお互いの名前のタトゥーを彫った。2人の生活で目立つのが、子づくりのペースの速さだ。2008年に長男、2009年に次男(本事件での犠牲者)、2010年には次女と毎年のように子供をつくったのだ(事件当時も妊娠中で、全員で6人の子供がいる)。
だが、夫婦はどこまでも無計画だった。忍は結婚直後こそ派遣社員として働きだしたが、その給料だけでは生活が回らないと知ると、生活保護を受けながらあちらこちらで窃盗をくり返したり、保険会社に対して詐欺を働いたりするようになった。
とはいえ、彼らは計画的に犯罪をしたというより、場当たり的な考えでそれをやっていたようだ。たとえば、粉ミルクを私用だけでなく転売目的でも盗み、窃盗で捕まっていたり、まとまった金が手に入ればすぐにしゃぶしゃぶや寿司を食べて使い果たしていたという。
そんな幼稚な2人にまともな子育てなど望むべくもない。家の中では幼い子供たちだけでなく、時には十数匹に上る犬や猫が放し飼いにされていた。家賃7万円の2LDKアパートにこれだけの子供と動物が入り乱れていれば、生活が破綻するのは自明だ。ペットもきちんと飼育されていたわけでなく、次々と死なせては近所の荒川に棄てていたらしい。
こうした生活の中で事件は起こる。
忍と朋美の話では、子供たちの中で次男と次女が「勝手にものを食べる」「部屋を散らかす」「叫ぶ」など手に負えない言動が目立ったそうだ。とはいえ、まだ2、3歳の幼児であり、そうした行為は仕方のないことだ。だが、2人はそれを理解して受け入れることができなかった。
そんなある日、実家でのクリスマスパーティーで、次男が勝手にピザを食べたという理由で朋美が激怒して忍に言った。
「この子、また食べ物取ったんだって! 怒りなよ!」
これを機に、夫婦は次男をウサギ用ケージに閉じ込め、次女を犬用のリードに結んで行動を制限することにした。そして気に入らない言動をすれば、暴力を含む「しつけ」を行うようになったのだ。