圧倒的な「密」だらけ空間であるライブハウスは、コロナ時代に辛酸をなめた
好きなパンク(註14)やハードコア(註15)のライブ、それも地下の小さなライブハウス(註16)でおこなわれるイベントなんて、3密(註17)どころか4密も5密もありそうな密中のミッツ密。
満員電車の2倍くらいのぎゅうぎゅう詰めの中で、みんなが大汗をかきながらモッシュ(註18)やダイブ(註19)をかまし、唾を飛ばしてシンガロング(註20)することこそが楽しいのだから、そもそも、コロナの感染拡大策とは対極をいくようなコンセプトの空間なのである。
註14 1970年代から米英ではじまった、ロックの1ジャンルであり。ファッションや思想を含む一大カルチャー。僕としては言いたいことがありすぎて逆にこれ以上は説明不能。
註15 1970年代後半から米英ではじまったパンクの1ジャンル、およびファッションと思想。先代のオリジナルパンクをエクストリーム化したものである。
註16 日本の法律では、小さなライブハウスは基本的に“飲食店”として登録されている。ワンドリンクが必須なのはそのため。
註17 コロナ拡大期に政府が掲げた言葉。集団感染防止のため、3つの密「密閉・密集・密接」を避けるべきとされる。
註18 ステージに近いフロアでおこなわれる、客同士の激しいおしくらまんじゅう&ぶつかり合い。
註19 ステージに上がってから密集したフロアの人の頭上に飛び込んでいくこと。そのまま人の上を転がっていく“クラウドサーフ”に移行することが多い。
註20 ステージ上のアーティストとフロアの客が、一緒になってサビを大合唱すること。パンク、ハードコア系のライブでは非常に多い楽しみ方。
実際、コロナ拡大前もライブハウスに行ったあとは、体感として約30%の確率で軽い風邪気味になった気がする。
そんなライブハウスではコロナ禍最初期の頃、案の定クラスターが発生(註21)し、早々に社会から警戒視されるようになった。
註21 2020年2月下旬に確認された大阪のライブハウスを皮切りに、日本中さまざまな土地のライブハウスでクラスターが発生した。
一時期はほとんどのライブハウスが営業を自粛していたが、コロナはそう簡単に終わらないということがわかってきた頃からか、“感染対策をしっかり施し、人数制限をおこなう”という条件下で、ライブハウスは粛々と営業を再開した。
だが僕自身はそんなライブハウスに、なかなか足が向かなかった。
なじみのライブハウスのスケジュールについては、ネットでチェックを欠かさなかったのだが、コロナ禍以降は出演ラインナップ自体が精彩を欠き、なかなか触手が伸びなかったのだ。
ああ、あの目くるめく密集大暴れ空間が恋しい。
早く行きたいなあ、という思いだけを募らせながら。
まん延防止等重点措置下の東京のライブハウスは、どんな感じだったのか
そしてコロナ第6波(註22)が猛威を振るいつつも、オミクロン株の弱毒性が囁かれてきたこの2月、相も変わらずライブハウス情報をチェックしていた僕の目に、3つのとても気になるイベントが入ってきて、久々に出陣することにした。
まずは、3月11日に「渋谷クラブクアトロ」(註23)でおこなわれるイベント「無機質な狂気」(註24)第12夜である。
出演はマスターベーション(註25)、OXYDOLL(註26)という1980年代ジャパニーズパンク(註27)のレジェンド級バンドと、赤いくらげ(註28)の計3バンドである。
マスターベーションとOXYDOLLは昔からよく知っていたが、赤いくらげは初めて。
調べてみると大変魅力的なバンドであることがわかり、とても楽しみになった。
註22 2022年1月からはじまった日本における過去最大の感染拡大期。
註23 渋谷のセンター街、商業施設の上層フロアにある大型ライブハウス。1988年営業開始し、1990年代前半には一世を風靡した“渋谷系”アーティストがよくライブをする場所として知られた。下層階はかつてパルコだったが、現在はGU。
註24 2016年から都内のライブハウスで定期的に開催されているパンク系イベント。
註25 1981年に結成され1985年に解散、2016年に活動再開したパンクバンド。ボーカル・卑龍がカミソリで体を切り裂きながら歌うなど、異様なパフォーマンスで知られたが、曲もめちゃくちゃかっこいい。
註26 1982年に結成された名古屋のパンクバンド。アヴァンギャルドな曲調と過激な歌詞、ファッションで知られる、かなりぶっ飛んだバンドだった。80年代にはこういうバンドがいっぱいいたなあ。
註27 1980年代に中高生だった僕は、東京ロッカーズ〜インディーズブームと続き、過激なパンクバンドが群雄割拠していた時代に多感な青春時代を送り、多大な影響を……注釈にならねえな。
註28 2014年に結成された、自称“サイケデリックニューウェーブPOPアートロックバンド”。ネットで動画を観ると、時代錯誤的で変態的で怪しくて激しくて、たいへん見所のあるバンド。早くライブを観てみたい。