「東の『笑点』、西の『座王』になれれば」-千原ジュニアが明かすバトルではなくお笑い番組としての『座生』の野望_4

追い詰められてわかる、芸人の骨の太さ

様々な知識や語彙力、記憶力、それを引き出す瞬発力や発想力も試される『座王』。だが、オールラウンダーだけではなく、FUJIWARA・原西のようなギャガー、奇想天外なエピソードトークが豊富なチャンス大城、あるあるネタやモノマネを得意とする藤崎マーケット・田崎なども座王に輝いた経験がある通り、大きく突き抜けた能力を持つ者も勝ち上がりやすい。
200回以上、現場で芸人のストイックな笑わせ合いを見てきた千原は、『座王』に向いている芸人をこう分析する。

「大喜利だけじゃなくていろんな要素も入っていますからね。歌もあって、トークもあって……あとは、システムとしてドロー(甲乙つけがたい対戦のときは審査委員長が引き分けと判断し、再試合が行われる)があるのも大きい。
ドローが続くと、何も引き出しがなくなることがあるんですよ。引き出しも何もない状況になって、そこから笑いが取れるかどうか。そこではじめて、その芸人のホンマの骨の太さがわかるというか。だから……普段から芸人であり続けている人、ですかね」

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『座王』名物ドロー。ドローの場合は再試合となり、勝敗が決するまで戦い続けなければならない

負けざまがいい芸人も、番組の華

一方で、『座王』は即興ネタに強い、実力派ばかりが参加しているわけではない。勝率は低くとも、継続的に登場している芸人もいる。
例えば、当初は勝つ気配が薄かったものの、高い向上心によって即興力を身に着けてきたフルーツポンチ・村上、そして冒頭で必ずビックマウスを炸裂させるが、気持ち良いくらいキレイに敗北することが多く、少し照れながら敗退席に向かうことが多い、しずる・KAƵMA。

さらに、負け続けた者だけに与えられる「土下座王」に不名誉ながら輝いた、芸能リポーター・井上小公造のモノマネが有名な女と男・市川などだ。“負けざま”にインパクトのある彼らも、番組に必要な人材となっている。

「村上にしてもKAƵMAにしても、実際の対戦ではスベって負けたとしても、そのスベったことが結果として笑いにつながる。それって結局、スベってないってことなんですよ。それができるのは芸人としても強いし、呼ばれ続けている理由のひとつですね。
あとは……『座王』に出たことによって、本来開くはずのなかった扉が開いたとか、俺、こっち(のネタ)も意外と行けるんやみたいな感じで、広がりが出た芸人もいるじゃないですか。そういう、新たな一面に芸人が気づく番組にはなっていればいいですけどね」

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ロングコートダディ・堂前。大喜利力に定評があったが、『座王』で一般の人にもその実力が知れ渡った