歌を諦めた10代のほろ苦い思い出
密かに憧れていた男の子を追いかけて入った合唱部でルビーの持つ歌の才能を見出してくれたV先生も個性的で神経質で、でも実はものすごく熱くて温かい。
個人的なエピソードになりますが、わたし自身、ルビーと同じくのどかなところで生まれ育ち、音楽の先生に東京の声楽科への進学を目指すよう勧められた経験があります。
その流れで授業の帰りに数か月だけ先生の自宅で聴音や歌のレッスンをしていただいたことがあり、当時の先生を思い出しながら見ていました。
結局わたしは経済的理由や自信のなさから音楽大学受験をあきらめましたが、V先生を通して青春時代に指導してくれた先生への感謝が蘇ってきました。
聴覚障害者の家庭であることからからかわれることも多く、学校では自分を出せないでいたルビーは、どんな困難に直面しても諦めずに自分の未来を切り開いていきます。
私自身、音大をあきらめた10代の頃のほろ苦い経験から、今では何事もあきらめずにいようと心に決め、好きなことに全力で向き合うようにと生きているので、この映画からあらためて勇気とパワーをもらいました。
この作品に感動したあまり、もとになったフランス映画『エール!』も鑑賞しましたが、こちらも素敵な映画でした。一家の生業が『エール!』は漁業でなく酪農であったり、家族の持つ魅力(特にお父さん!)や主人公にはまた違った輝きがありますのでぜひとも両方見ていただきたいです。
歌や音楽が好きな方だけでなく、あたたかい愛情に包まれたいすべての人におすすめしたい映画です。
『コーダ あいのうた』(2021)Coda/上映時間:1時間51分/アメリカ
●公開中