「ゲームしている時だけは、嫌なことを忘れられる」

かなり重篤な例ですが、どのような問題を抱えた子供が依存症になるのかがわかるのではないでしょうか。ゲーム依存の当事者の言葉です。

「ゲームしている時だけは、嫌なことを忘れられるんです。もう何も考えなくていい。だから、そっちの世界の方が居心地が良くなって、自分の居場所になる。そうなると、リアルの世界で何を失おうと、困ったことになろうと、どうでもよくなるんです」

依存症は「孤立の病」と呼ばれています。心にぽっかりと穴が開いた時、それを埋めようとして何かに没頭する。ゲーム・ネット依存の場合、現実から二次元への逃避なのです。それを容易にしているのが、ゲームやネットの持つ中毒性です。これらの商品には、ユーザーを没頭させる数々の仕組みが施されています。

あらゆる端末で楽しめる利便性、物語のアップデートで半永久的に楽しめる持続性、眠気を吹き飛ばす激しい音や振動、景品をもらえるガチャ、プッシュ通知、オンラインユーザーからの誘い……。

こうしたトラップ(罠)のような仕組みが、無自覚のうちに子供たちを二次元の世界へ引きずり込んで、抜け出せないようにしているのです。大前提として申し上げておきますが、私はゲームやネットが絶対的に悪だとは思っていません。使い方によっては、良い気分転換になるし、コミュニケーションをより円滑にする効果もあるでしょう。

私が問題だと考えているのは、先の例の子供のように、リアルの空間に居場所を失った子供たちが、現実逃避として二次元の世界に逃げ込み、そこで知らず知らずのうちに金銭から健康まで多くのものを奪われている事態です。