現実逃避の手段としてゲームに依存
A君は比較的裕福な家庭で一人っ子として生まれ、親に溺愛されて育った。頭もよく、スポーツも得意だった。ところが、中1の時に、父親が事件を起こして逮捕されてしまう。
父親はそのまま家からいなくなり、母親とともに小さなアパートに移り住むことになる。A君は一生懸命に働く母親を支えようと、洗濯に料理にとがんばって励んだ。自分が父親代わりにならなくてはと考えていた。
しかし、中2のある日、母親が見知らぬ男性を家に連れてきて、「お母さんの恋人だから」と紹介してきた。60代で祖父ほどの年齢差のある人だった。
男性は頻繁に家にやってきては、A君に対して「勉強しろ」「片づけをしなさい」などと言って父親のように振舞った。時を同じくして、学校でも同級生から「オヤジが逮捕されたんだろ」と言われていじめが始まる。
A君は家庭でも学校でも居場所を失い、部屋に閉じこもってゲームにのめり込んでいった。その時間はどんどん長くなっていって、日に2、3時間の仮眠をとる以外はずっとゲームをしていた。
彼の言い分としては、オンラインで他のユーザーとつながっているので自分だけ抜けることができなかったのだという。ゲームの中で必要とされていることが自分の存在意義になっていたのだ。
それで、トイレに行く時間さえも節約するためにペットボトルに用を足していた。
中学3年時はほとんど登校しないまま卒業。進学した定時制高校もすぐに中退し、ますますゲームにのめり込んでいった。こうした生活が祟ってA君の体重は20キロも落ち、栄養失調状態に陥った。そうして母親に連れられて緊急入院することになった――。