「いい写真」とはどんな写真か?
はたして、「いい写真」はどのような写真なのか。まずはそんなことから始めてみたい。
「いい写真」について語るのはけっして簡単なことではない。人によってそれは大きく違い、けっして数値化できるわけではないからだ。例えば、どんなにピントがあっていなくても露出が適正でなくとも、個人の思いが詰まった写真は他の何物にも代えがたい。
例えば、家族写真がそれにあたるだろう。
どんなに有名だったり高価な作品よりも、個人にとってそれは大きな価値と意味を持つものだろう。そのことは理解している。ここでは個人的に深く関わりのある写真は抜きにして、あくまで鑑賞する上での写真作品ということで話を進めていきたい。
ここに一枚の写真がある。写真家・森山大道が撮影した犬の写真だ。「三沢の犬」と呼ばれている。森山は戦後の日本を代表する写真家で、街のスナップショットを中心に撮影をしてきた。20代の頃に、それまでの既成の写真に反抗するかのように制作されたアレブレボケ(画像が荒れ、ブレていて、ボケているの意味)の世界観は多くの者に衝撃と影響を与えた。写真界以外、さらには海外にも多くのファンを持つカリスマ的な写真家といっていい。