タマネギのみじん切りにもトライ

食生活による「体づくり」の転機はもう一つある。メジャー移籍後の18年のキャンプ前。プロ3年目の15年からアドバイザリー契約を結ぶ株式会社明治の担当者から栄養情報のレクチャーを受け、同行した調理師と調理実習を実施した。

タマネギのみじん切りから大谷自身が実践し、チキンライスの上にのせたオムレツにナイフを入れると〝ふわとろ〟の卵が開いていく「タンポポオムライス」をつくった。白米や玄米を鍋で炊く方法も教えられ、自分で日本と変わらぬ「おいしさ」を再現できるようになった。

好物は焼肉、大の苦手はトマト。大谷翔平をつくる食生活のリアル_2
写真はイメージです(画像:photoAC)

同年のシーズン後に「自炊といっても朝だけ。軽くオムレツをつくったり、その程度かな」と照れながら話していたが、料理への意欲が失われることはなかった。手術を受けた左膝のリハビリに時間を割いた19年のシーズン後こそ「Uber Eats(料理の配達アプリ)」を利用した食生活を送っていたが、20年のシーズン後には「自分で3食つくって食べていますよ。(メニューは)ご飯とタンパク質ですね。肉やホタテ、魚介系などが中心です」と話していた。

当時、料理技術の向上については「本当にゆでたり、焼いたりとか質素なものですね(笑)。調味料とかなるべく使ったりしないので。あとはフルーツを食べたりとか、野菜をゆでてそのまま食べたりとか。そんな感じで健康な食事を3食、食べています」とも。全ては野球につなげる「体づくり」のためだが、明治の担当者によれば「トリュフ塩をかけたら全部おいしい」と話していたこともあったという。

大谷翔平が苦手な食べ物は......

ここからはストイックな大谷が「食」で見せる意外な一面に触れたい。大谷が日本ハム時代の2017年に球団事業の一環で小中学校の校内放送向けに寄せたコメントは興味深かった。「僕が好きな給食メニューは米粉パンでした。モチモチとした食感が大好きでチョコレートクリームをつけて食べるのが大好きでした。給食の献立に両方がそろう日をとても楽しみにしていました」。米粉は小麦粉に比べて栄養素も豊富で、炭水化物のほかにもたんぱく質、脂肪、ビタミンなどが含まれる。自然に栄養価の高いものを好んで食べていた。

大谷の苦手な食べ物はトマト。同じく日本ハム時代の2017年に応援大使を務めた北海道月形町で開催されたシーズンオフのトークショーの最後には「飲んだことがない」というトマトジュースを一気に飲み干し、町民から大歓声を浴びた。後にも先にも大谷がトマトを食べた(飲み込んだ)のはこの時だけかもしれない。