赤ちゃんポストを見つめる目、そして美味しそうな韓国スナック
サンヒョンたちを現行犯逮捕しようと、ずっと尾行を続けている女性刑事コンビのシーンも印象に残ります。
赤ちゃんポストに子供を置いていったソヨンに強い憤りを覚えていたスジン刑事(ぺ・ドゥナ)とその後輩であるイ刑事(イ・ジュヨン)とのやりとりは、私たち観客に赤ちゃんポストについて一緒に考える時間をくれていると感じました。
とある事情で、愛するわが子を手放そうと決意したソヨンの切ない母性は、それに触れたサンヒョンやドンスたちだけでなく、刑事スジンにも変化をもたらします。
ちなみに刑事コンビの張り込み中には韓国スナック(辛ラーメンやら韓国おでんやら)をむしゃむしゃと食べるシーンがいくつか出てくるのですが、それはそれは美味しそうで、わたしは上映中におなかがグーッとなってしまいました(恥)。
鑑賞後には、韓国料理店や韓国食材ショップに行く予定を組んでおくことをおすすめしたいです。
「生まれてくれてありがとう」
一番印象に残っているのは「生まれてくれてありがとう」という言葉が出てくるシーン。登場人物はそれぞれが、親の不在や、本当の家族との間にできたこころの隙間に苦しんでいるのですが、その隙間をやさしく満たしあう、救いのような言葉でした。
お互いを認め合い、幸せになってほしいと願う絆が確かにそこにはありました。
血のつながりの有無に関わらず、いわばこころでつながった家族になった瞬間。
私自身も大切な友人を思い出していました。
出会った頃から不思議と無条件でお互いの存在を認めあい、自分のことのように幸せを願いあう家族のような存在。
自分をとても大切に思ってくれる人がいる、また自分もそんなふうに思える相手がいることはそれだけで勇気とやさしさがわいてきます。
罪を犯し、明るいとはいえない道を歩んできた登場人物たちが、家族のような存在を思い出し、それを頼りに強く生きていってほしいと願いながら映画を見終わりました。