「歳を取ることも前向きに捉えています」
こうして勤め始めて約半年。ただの仕事を超え、2人には心身に大きな変化があった。
「ここに来てからずいぶん若返りましたよ。もう、シワがちょっと減った気がするくらい(笑)。ここにいるといろんな人と接して、日々、新しい情報が入ってくるんです! 81歳の同僚なんて、『僕はここで“可愛い”って言われるのが1番の幸せ』だと言うてる(笑)」(均さん)
「働くって悪くないなと、改めて思いました。人と接することもできるし、お客さんによって『この人には敬語、この人にはタメ口』と使い分けなきゃ、と頭も回ります。若いお客さんからは『可愛い』『おしゃれ』なんて言ってもらえるし(笑)。若い子がキャーキャー言ってると、こっちも一緒にキャーキャー言って。一緒に写真も撮ったりして、元気になります!」(京子さん)
加齢による身体の衰えや「老害」という言葉に象徴されるように、歳を重ねることにはネガティブな印象がつきまとう。しかし、2人は老いを憂うどころか、「今が一番楽しい」とサングラス越しに目を輝かせる。
「ここで働き始めてすごく充実してるし、歳を取ることも悪くないと思ってます。歳を取ると友達も減るし、妻や夫に先立たれて孤独だと言う人もおるけど、1人ですごく楽っていう人もおる」(均さん)
「私、歳を取ってもいいじゃない!って思うんです。みんな仲良く歳を取っていけばいいし、嫌がることはないと思う。孤独だって、楽しい部分と嫌な部分のどっちを見てるかよね。1人ってことは自由でもあるんだから、自由でいい!って思わないとどんどん暗くなっていくし、閉じこもってちゃダメなんです」(京子さん)
京子さんがこう思えるようになったのは、「人生で1番つらかった」と振り返る50歳の頃の体験が影響している。当時は認知症の父を介護するため、九州の田舎で3カ月ほど過ごして面倒をみたが、これを乗り越えたことで変わったそうだ。
「そこは誰もいない田舎に、家が1軒ポツンと建ったような場所。声が響くくらい閑散として、誰も頼れずに毎晩泣いていました。でも、その経験を通じて人として一皮剥けて『ちゃんと生きないと』と思えるようになった。
その後、子育てもひと段落して旦那は死に、1人だけど自由に生きられるようになったこともあって、歳を取ることを前向きに捉えています」(京子さん)
2人は「人生の終わりのころに花が咲いちゃったみたい(笑)」とお互いの顔を見て笑う。最後に、2人が思い描く“最期”を聞くと、ここでも明るい言葉が返ってきた。
「最期はピンピンコロリ! ただ生きとるだけじゃあかんから、充実しながら100歳を目指して頑張るぞい、と」(均さん)
「夫の祖母は90歳のとき、食堂で納豆定食を食べながら亡くなったんです。口の中にご飯を入れたまま眠るように──直前まで元気で明るく、それが私の理想の死に方です。何度も言うけど、歳を取るって悪くない!」(京子さん)
取材・文/久保慎













