認知バイアスは「人類の命を守ってきた知恵」だった
行動経済学は、私にある重要な事実を教えてくれました。それは、認知バイアスがあったからこそ、人類は生き延びることができたということです。
大昔、私たちの祖先は集団で暮らし、日々「生きるか死ぬか」の選択を迫られていました。そんな中で、目の前のカラフルなキノコに興味本位で手を伸ばしていたら、すぐに命を落としていたでしょう。そうした進化の過程で、脳は次のような認知バイアスを身につけていきました。
「今のままでいたほうが安全だ」=現状維持バイアス。
「まずは目の前のことに集中しよう」=現在バイアス。
「みんなと同じ行動を取ることで生き延びられる」=同調バイアス。
にもかかわらず、脳の仕組みは原始時代のまま。今もなお、私たちは時代にそぐわない認知バイアスに引っ張られながら生きています。
つまり、認知バイアスとは、ただの「脳のクセ」ではなく、人類の命を守ってきた「生きる知恵」なのです。だからといって、認知バイアスを「排除すべき」と考える必要はありません。
今の私たちには、認知バイアスとうまく付き合う知恵があります。それが、この本の最大のテーマである「ナッジ」なのです。
私自身かつては深酒をしては他人に迷惑をかけ、喘息になってもタバコをやめられず、ダイエット初日にスナック菓子に手をつけ、仕事は締切ギリギリでやっつけ、ネットサーフィンをしていつもイライラしていました。
でも、今は酒もタバコもやめ、ダイエットにも成功し、締切をオーバーすることもなく、スマホは1日30分以内におさまっています。私はナッジを用いたおかげで幸せな人生を手に入れました。
あなたが「なりたい自分」を手に入れるために足りなかったのは、この2つだけ。「脳のクセ(認知バイアス)」を知ること。「ナッジ(脳のクセに合わせた仕組み)」を作ること。本書は、この2つをあなたにお伝えし、「なりたい自分」を手に入れるための一歩を踏み出せることを願って書きました。
文/竹林正樹 写真/shutterstock













