60~70代に目立つ「自然環境への対応不足」

長年、山岳遭難捜索救助に携わる太田さんによれば、昨年から2026年にかけて、遭難事故の内容や遭難者の層に、現場で感じるほどの大きな変化はないという。

一方、全体的な傾向として目立つのが、60~70代の登山者だ。

「自然環境の変化に対応できず、疲労で動けなくなるケースがあります。体調や集中力をうまくコントロールできていないことが多いと感じます」(太田さん、以下同)

2024年の警察庁の統計では、山岳遭難者のうち60歳以上が50.0%を占めた。死者・行方不明者に限ると、60歳以上は64.0%に達している。高齢登山者の事故が目立つという太田さんの実感は、全国統計とも重なる。

太田さんが問題視するのは、年齢そのものというよりも、その日の自然環境に合わせて計画を変える意識の不足だ。

「登山当日の山域の気温や湿度に合わせて、装備や行動ペースを見積もり、準備しなければなりません。実際に山へ入ってからも、自然環境の状況に応じて行動や判断を変える必要があります」

特に近年は、気温の上昇や湿度の変化を踏まえた準備が欠かせないという。

冠雪の北アルプスの穂高連峰の奥穂高岳(写真/PhotoAC)
冠雪の北アルプスの穂高連峰の奥穂高岳(写真/PhotoAC)
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たとえば、登山に持っていく水の量は、予定している行動時間や山域だけでは決められない。気温や湿度が高くなれば、必要な水分量や休憩の取り方も変化する。それにもかかわらず、従来と同じ感覚で計画を立ててしまう登山者がいるという。

「水分補給についての見積もりが甘いケースがあります。暑くなった時期、特に真夏は、年齢や体力によっては登山を控えたほうがいい人もいるでしょう。季節や年齢に応じて、自分が安全に活動できる時間を、もう少し慎重に考えたほうがいいと思います」

環境省も、高齢者は若い世代より体内の水分量が少なく、暑さや喉の渇きに対する感覚、体温を調節する機能が低下するため、熱中症への注意が必要だとしている。気象庁も、野外活動では気温だけでなく、湿度などを反映した暑さ指数を確認し、早めに予防行動を取るよう呼びかけている。