「8万円も通過点」との強気論もむなしく

わずか3カ月前、日経平均株価が史上初めて7万円台に乗せたとき、市場には「8万円も通過点」という強気論があふれていた。だが9月に入った現在、日経平均は6万5000円前後で足踏みを続けている。

9月4日の終値は前日比806円高の6万5020円で、5営業日ぶりの反発だったが、AI・半導体関連が牽引した一方で強い上昇材料に乏しく、上値の重い展開が続く。熱狂の余韻は、明らかに冷めつつある。

思えば、8月18日に日経平均が1759円安と急落した際、株探の市況コラムはこれを値がさAI・半導体への「一極集中」を、市場が発するSOSシグナルと呼んだ。

その警告は的中する。翌19日、日経平均は2134円安(3.16%)と大幅続落し、ソフトバンクグループやアドバンテストなどAI・半導体関連が軒並み売られて総崩れとなった。「深呼吸」どころか、本格的な調整の入り口だったのである。

本稿では、この株高を支えてきた2つのエンジン、すなわち「AIメモリー景気」と「歴史的円安」を分解し、その賞味期限がどこにあるのかを整理したい。

第1のエンジン──「AIインフレ」というボーナスステージ

2026年上期のヒーローは、誰が見てもキオクシアHD<285A>だった。年初1万1350円で始まった株価は6月22日に11万2700円まで駆け上がり、半年でほぼテンバガーを達成、一時は国内時価総額トップにまで立った。

年初1万1350円で始まった株価が、6月22日に11万2700円まで爆上がりしたキオクシア
年初1万1350円で始まった株価が、6月22日に11万2700円まで爆上がりしたキオクシア

この爆発力の源泉は、AI半導体を動かす「メモリー」の構造にある。メモリーは大きく、演算中のデータを一時的に置くDRAMと、データを保存しておくNAND型フラッシュメモリー(ストレージ)の2種類に分かれる。

そして生成AIの学習・推論に不可欠なHBM(広帯域メモリー)は、実はこのDRAMを何層も垂直に積み上げた“積層DRAM”にほかならない。つまりHBMはDRAMの一種であり、量産できるのはDRAM大手のサムスン電子、SKハイニックス、マイクロンの3社に限られる。

ここに需給の連鎖が生まれる。HBMは通常のDRAMより何倍もの製造能力(ウエハー)を消費するため、3社が利益率の高いHBM生産を優先すればするほど、サーバーやスマホ向けの一般的なDRAMの供給が細り、価格が高騰する。

株探が「AIインフレ」と呼ぶこの現象は、DRAM不足にとどまらず、メモリー市況全体の逼迫と価格上昇へと波及した。

写真はイメージです
写真はイメージです
すべての画像を見る