その車がどこで、どのような支援を受けて作られたか
日本で欧州の対中電気自動車規制を語ると、話はすぐ関税率に向かう。BYD(比亜迪汽車)はいくら、SAIC(上海汽車集団)はいくら、と数字を並べれば説明した気になりやすい。
だが、EUが本当に問題にしたのは、車の値段そのものではない。その安さが、どのように作られているのかである。
欧州委員会が中国製電気自動車の調査を始めたのは2023年10月だった。しかも、欧州の自動車会社から正式な訴えが出たからではない。欧州委員会が自ら動いた。電気自動車を、雇用や技術、産業の将来にかかわる重要な分野と見ていたからである。
対象も「中国企業」ではない。中国で作られた特定の電気自動車(BEV)である。このため、中国企業の車だけでなく、中国工場で生産されたテスラやフォルクスワーゲン系の車も対象になる。
逆に、すべての電動車が対象というわけでもない。プラグインハイブリッド車(PHEV)は外れている。EUが見ているのは会社の国籍ではなく、その車がどこで、どのような支援を受けて作られたかである。
安さの中に、政府の支援がどれだけ入っているのか
欧州委員会が調べた支援の範囲は広い。完成車メーカーへの補助金だけではなかった。低い金利で借りられる融資、安い土地、税の優遇、研究開発への支援、電池やその原料を安く手に入れられる仕組みまで調査した。
ここは難しく考える必要はない。普通の会社なら、工場を建てる土地を確保し、銀行などから資金を調達し、部品を仕入れ、税金を払う。
その一つ一つが政策によって他社より有利になれば、最後に出来上がる車も安くなる。工場の働き方が特別に優れていなくても、会社の外側にある条件だけで価格差は生まれる。
だからEUは、「中国車は安い。だから中国企業の生産性が高い」と単純には考えなかった。安さの中に、政府の支援がどれだけ入っているのかを調べたのだ。
この見方はEUだけの主張でもない。OECDが2026年に公表した調査では、2005~2024年に中国企業が受けた政府支援は、OECD諸国の企業の平均3~8倍だった。
さらに、中国企業が拡大させた世界市場シェアの約60%が、補助金によって説明できるとの分析も示された。













