内見は入るのに成約ゼロ

西岡さん自身、過去にマンションを売却した際、この囲い込みの被害に遭った強い疑いがあるという。

「10年ほど前、住んでいたマンションをある仲介会社に専任媒介で任せたことがありました。毎週末のように内見が来て、トータルで十数件案内したにもかかわらず、半年経っても全く売れませんでした。不思議に思い後から振り返ってみると、他社の仲介会社を経由して来た検討者が『ゼロ』だったと気が付きました。つまり、すべて『両手』の検討者でした。通常の営業活動をしていれば確率論的にこんなことはありえません」

通常、内見の際には「今日は〇〇不動産経由のお客様です」といった報告があるはずだが、西岡さんの物件に来ていたのはすべて、その仲介会社が自社で連れてきた顧客だけだったのだ。

「私が住んでいたのは大規模マンションだったので、仲介会社も自社で『とりあえず湾岸のマンションを見たい』という顧客リストをたくさん持っていました。そこに私の部屋を無理やりあてがい、『ついでにここも見ませんか』と、本来は予算オーバーで全く興味がない人まで連れてきていたんだと思います。私はアナウンサーという職業柄もあって、内見には同席せず営業担当者だけが対応していたせいもあったかもしれません。検討者と顔を合わせることがなかったので真剣度も全くわからず……」

画像はイメージです(写真/Shutterstock)
画像はイメージです(写真/Shutterstock)

さすがに「実在しない検討者を捏造したということはなかったと思う」と西岡さんは語るが、やろうと思えばできてしまうのが、不動産業界の怖いところだ。

「妻と二人で毎週末、内見のために4時間も家を空けて掃除して待っていたのに、全く売れず……あの時期は本当に辛かったですね」

そして西岡さんが怒りを感じた最大の理由は、「期限」があったことだ。次の住みかえ先の住宅ローンの都合で売却期限が決まっていたのである。

「まだ売主がそこに住み続ける予定なら、百歩譲って分かります。もちろん不利益を与えられていますが、致命的な事態にはなりませんから。しかし、私の場合は期限までに売らないと次の家に住めない可能性がありました。そういった明確な事情を伝えているのに、彼らは顧客の利益を完全に無視して両手仲介の利益を優先した。最終的には『うちが売値より500万円安い値段でなら買い取りますよ』などと言われましたが、これは代理人として絶対にやってはいけないことだと私は思います」