仲介会社の営業を狂わせる「両手仲介」の誘惑
そもそも「囲い込み」とは、売主から物件の売却依頼を受けた仲介会社が、自社で見つけた買主とだけ契約を結ぼうとし、他社からの内見希望や問い合わせを「すでに申し込みが入っている」「売主が海外出張に出ていて今は内見ができない」などと嘘をついて断る行為だ。売主は売却するチャンスを逃し、大きな機会損失となる。
なぜこのような背信行為をするのか。それは不動産独特の取引形態が原因となっている。
「当然ですが、売主は不動産を高い価格で売りたいものです。逆に、買主は安く買いたいです。両者の利益は相反するので、両方の媒介、わかりやすくいえば代理人をするというのは根本的に矛盾をはらみます。しかし、不動産はなぜか、売主・買主双方の代理人を兼ねることができることになっています」(西岡さん、以下同)
売主・買主のどちらか一方の代理人(媒介)をすることを「片手取引」、同時に双方の代理人をすることを「両手取引」と呼ぶが、不動産仲介会社は、双方から手数料を取ることができる「両手取引」を目指す。
そこで、「片手」の客、つまり他の不動産会社から紹介された客を“あらゆる手段”を使って断るわけだ。「今は内見ができない」と嘘をつく場合もあれば、「片手」の客だけ対応を後回しにして、長期間放置することもある。
西岡さんは、囲い込みが横行する背景には営業担当者のインセンティブ設計があると解説する。
「不動産会社の営業の給与は、基本給が低く、インセンティブ(歩合)の割合が非常に高いケースがほとんどです。もし売主と買主の両方から自社で手数料をもらう『両手仲介』になれば、一撃で数十万といった大きなボーナスが入ることもあります。人間である以上、両手を狙いたくなるのは仕方ないことだと思います」
しかし、売主だけでなく、買主側から見ても両手仲介にはリスクが潜んでいる。
「元々、仲介会社は『売主の代理人』として物件を預かっています。そこに買主が直接問い合わせて両手仲介になった場合、営業マンは高く売りたい売主の利益を優先するため、買主の値下げ交渉などは適当にあしらわれてしまう可能性もあります。フェアな交渉をしたいなら、買主は自分が信頼できる別の仲介会社を挟んだ方が安全です」
2025年からは国交省がこの囲い込みの手法のひとつを処分対象にしている。最近では大手仲介会社が営業担当者のインセンティブを廃止することも発表した。実際、囲い込みは減っているのだろうか。
「業界全体の市況が厳しくなっている現在、小さな仲介会社には囲い込みをする余裕はないと思います。両手になればラッキーですが、とにかく片手でも成約を優先させるのではないでしょうか。
しかし今年、仲介の現場を経験しましたが、体力のある大手ほどまだグレーな囲い込みをしている空気を感じることはありました。私の会社から内見の申し込みをしても『ちょっと売主が……』『今週末はちょっと』みたいに、明確な理由を言わずに売主の都合を匂わせて逃げられるような対応をされてしまいました」
あからさまではなくても、やはりグレーな行為はまだ残っているようだ。














