デベロッパーの「超富裕層シフト」

このような難しい相場の中で、今後の東京のマンション市場はどうなっていくのか。

「まず、新築は下がることはないでしょう。そもそもデベロッパーはもう都心には一般の購入者向けのマンションを作りません。現状を聞いていても、新築で作るのは超富裕層向けの物件ばかりです。例えばパークコート麻布十番東京 ザ タワーのように一番上の階に200平米もの巨大な部屋を作るトレンドがあります。30億円払ってくれる人にドンと売ってしまった方が、1億円しか払えない人を30人集めるより楽だ、というフェーズにデベロッパーは完全に入っています」

パークコート麻布十番東京 ザ タワー(公式HPより)
パークコート麻布十番東京 ザ タワー(公式HPより)
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株高を背景に、利益確定した富裕層の資金の受け皿として、都心の新築マンションはますます豪華で広くなり、手の届かない価格帯へとシフトしていく。西岡さんは「普通の人が都心に住めたボーナスタイムは、いよいよ確実に終わった」と語る。

一方で、一般の購入層が主戦場とする中古マンションや、都心ではないエリアについてはどうだろうか。

「基本的には大幅な下落はなく、今の価格を維持していく方向になると思います。ただ、湾岸や品川など、今後大量供給が控えている場所は一時的に需給が崩れ、下落の危険性があるかもしれません」

では、一般の読者は今、マンションを買っても大丈夫なのだろうか。西岡さんのアドバイスは明確だ。

「実需で長く住むのであれば、絶対に買った方がいいと私は思います。その最大の理由は、恐ろしいスピードで進行している『家賃の高騰』です。知人が都心の保有不動産を賃貸に出しているのですが、そのマンションの家賃は今かなり上がっています。実際に先日、入居者が退去したタイミングで家賃を30%も値上げして募集したのですが、あっという間に4組もの内見があり、複数の申し込みが入りました。知人は『もっと高くすればよかった』と後悔していました」

30%の賃料アップが「良心的」に感じられるほど、貸し手が非常に強い市場になっているようだ。

「今のタイミングで家賃交渉(値上げ)をしてこない大家さんはいないと思います。このまま上がり続ける家賃を払い続けて賃貸に留まるのは、それ自体が大きなリスクです」

さらに、「少し待てば安くなるかもしれない」と考える層に対しても、西岡さんは冷静にこう指摘する。

「3年待って1000万円下がったなら待った甲斐があったと言えますが、その保証はどこにもありません。もし3年待って500万円しか下がらなかったら、3年間の家賃分を考えれば『買っておいた方が良かった』という話になってしまいます」

過去10年のように「無理して高いマンションを買い、資産価値が上がって大成功する」という時代は終わったかもしれない。しかし、だからこそ原点に立ち返るべきだと西岡さんは言う。

「ここ数年、家を買うという行為に、過剰に『資産価値』という言葉を持ち込みすぎたのかもしれません。自分が無理なく払える金額の範囲内で、価値が『上がる』よりも『下がらない』マンションをしっかり選んで買う。それが、自分の人生の選択として正解だと思います」

取材・文/集英社オンライン編集部