年収の10倍の住宅ローンはもう組めなくなった
アベノミクスが始まった2013年から東京の不動産価格は上昇を続け、東京23区の新築マンションの平均価格は1億3613万円、中古マンションは1億393万円(70㎡換算)に達した。しかし、今年に入ってついにその上昇に陰りが見え始めた。その兆候は、すでにデータにも表れている。
東京カンテイによると、2026年5月の東京23区の中古マンション70㎡価格は1億2849万円で、前月比+1.0%と25カ月連続で上昇している。だが、その内実を見ると、相場の変調ははっきりし始めている。港区、千代田区、中央区などの都心6区に限ると、同月は1億8748万円、前月比-0.4%と2カ月ぶりに下落した。
さらに、東京23区でも価格改定シェアは前年同月の36.3%から44.2%へ上昇している。つまり、売り出し後に価格を下げる物件が明確に増えているのだ。これまでなら強気の価格でも買い手がついた東京23区のマンション市場で、売主が価格の見直しを迫られ始めている。
成約件数にも減速感は表れている。東日本レインズによると、2026年5月の東京都区部の中古マンション成約件数は1452件で、前年同月比-17.9%。5カ月連続で前年同月を下回った。
SNSでも「暴落が始まったのでは?」「バブルが天井をつけた」という声や「いやいや、高値チャレンジをしていた売主が適正価格に戻しただけ」といった声など、様々な意見が飛び交っている。
実際のところ、現在の東京マンション市場はどのような状況なのだろうか。
フジテレビを退社後、今年の5月の終わりまで不動産仲介業の仕事を経験してきた西岡さんは、そこで見てきた状況を踏まえて、現在の市況は「間違いなく、全体的には様子見の状況です」と分析する。なぜこのような事態になっているのだろうか。
「まず、今年になって上昇が止まった理由は、シンプルですが物理的な『グロスの壁(総額の限界)』でしょうね。実質賃金が大幅に上昇しているわけではないので、実需の人たちが買える総額には自然と限界があります。ここ数年上昇を続けてきた不動産価格が、ついにその壁にぶつかったのだと思います」(西岡さん、以下同)
さらに、もうひとつの要因が、金利上昇と銀行の「ローン審査の厳格化」だという。
「今年になって政策金利上昇を背景に、銀行の融資姿勢に変化が出てきました。これまで価格高騰を支えてきた『年収の10倍』といった過度なローンは、非常に出にくくなっています。いくつかの銀行が審査金利(その人が返済できるかを審査するときの金利)を、今年になって4%台に上げてきました。この影響は大きいです。
例えば審査金利を4%台で見られてしまうと、借りられる額は年収の6~7倍程度に留まります。そうなると、世帯年収が2000万円あっても1.5億円とか2億円のローンは組めなくなるわけです。そんな中でそういった高額の物件を買うためには、親からの援助や株の利益など何かしらのプラスアルファがないと突破できない壁が生まれており、これが市場の停滞感の一因となっています」














