売値を下げても利益は出ている
それでは、今年に入って都心部の価格が小幅ながら下落に転じた理由はなんだろうか。
「このような市況の中で、これまで『チャレンジ価格』と呼ばれるような強気の高値で売り出していた人たちが、さすがにこれでは売れないということに気づき始め、適正な価格に下げているのが現状です。また、事情を抱えた売り手たちが、売る必要に迫られて価格を下げている側面もあります」
西岡さんが指摘する「事情を抱えた売り手」とは、主に住み替え組のことだ。住み替え先の住宅ローンを組むのに際し、銀行から新居の引き渡しから半年や1年以内などの「売却期限」を付けられる人が多い。
例えば晴海フラッグなどへ住み替えた層が、旧居のローンを銀行に一括返済しなければならない期限が迫る中で、価格を下げてでも旧居を売らざるを得ない状況に直面しているという。また、事業としてマンションを買っていた法人が、利益確定や資金繰りのために投げ売りをしているケースもあるという。
「ただ、それでも彼らは十分に利益が出ている状態なんです。ここ数年の相場上昇で、買ったときよりもかなり上がっていますから。実質的に大きく損をしている人は、実は誰もいない市場だと言えます」
しかし、今まで右肩上がりだった相場が停滞・小幅下落したことから、買い手の心理状態は変化してきているという。
「主なマンションの購入層である30代は2010年代以降、基本的には上がり続ける相場しか経験していません。彼らにとって、初めて『マンション価格が下がった』と言われる状況に直面しているわけです。悪かった時期を知らないからこそ、モメンタムの変化に対して『こういう環境では買えない』といよいよ萎縮してしまっている人が多い気がします」
誰も損をしていないにもかかわらず、「さすがにちょっと今買うのは怖いなという気持ちが蔓延しており、精神的な不透明感が非常に影響している」と西岡さんは指摘する。
「何か劇的なことが起きない限り、しばらくはこの『臆病な相場』が続くのではないでしょうか」














