総裁選勝利後から円安が急進

高市早苗氏が総裁選に勝利してから3カ月も経過しない間に、市場は劇的な反応を示した。まずはドル円レートから見てみよう(図1-1)。

「円は1970年より弱くなった」専門家が断言…サナエノミクスで国民生活はさらに苦しくなる_2

高市氏が総裁選に勝利したのは2025年10月4日である。多くの専門家は、高市氏が総裁選に勝利すれば円安が進むであろうと予想していた。高市氏が積極財政を強調していたからである。そして、その予想どおり円安は急進した。

高市氏が総裁選に勝利する前日の10月3日時点は1ドル=147円台だったが、11月20日には157円台を記録した。2カ月も経ていない間に円がドルに対して約10円も安くなったのである。

ドル円レートは前年に160円台を超えたことがあったものの、そこからドルの価値は下がっている。ドルの強さを示す米ドル指数を見てみよう(図1-2)。

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このように、ドル指数は2024年には100を上回る水準であったが、2025年は100を切るようなレベルになっている。世界的に見れば、2025年は「ドル安」の状況なのである。

したがって、2024年の1ドル=160円の時よりも、実質的に見れば2025年11月時点の1ドル=157円のほうが円の価値は下がっている。

為替市場において、ドルに次いで取引の多いユーロとの為替相場を見てみよう(図1-3)。

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このように、総裁選勝利を機にユーロ円相場は急上昇して史上最高値の更新を繰り返し、12月22日には1ユーロ=184・92円を記録した。「安全資産」として名高いスイスフランも、全く同じ傾向を示した(図1-4)。

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見てのとおり、総裁選勝利を機に急上昇して史上最高値の更新を続け、1スイスフラン=200円に届きそうなところに至った。

次に、上記3通貨に加え、カナダ、オーストラリア、イギリス、ニュージーランドの通貨も含んだ過去3カ月間の通貨の強弱チャート(OANDA証券作成)も見てみよう(図1-5)。

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1本だけ急落している線が円である。このように、高市氏の総裁選勝利後わずかな期間の間に、円は急落し、「1人負け」の状態になった。

金利の急上昇

金利の代表的指標である長期金利は以前から上昇傾向にあったが、その勢いを増し、節目である2%を超えた(図1-6)。長期金利が2%を超えるのは、26年前の1999年2月25日以来である。

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金利が上昇した場合、普通は円高になるが、高市氏の総裁選勝利後は、円安と金利上昇が同時に起きるという異常現象が発生した。これが「サナエノミクス」に対して市場が発した警告である。

文/明石順平

サナエノミクスによろしく
明石 順平
サナエノミクスによろしく
2026/6/5
1,089円(税込)
240ページ
ISBN:978-4797681734

株価が史上最高値を記録しているのに、なぜ国民生活は苦しいのか。偽りの好景気「サナエノミクス」の正体を、公的データをもとに解説する。

「サナエノミクス」とは、高市早苗総理が提唱する経済政策の通称で、安倍晋三・元総理の「アベノミクス」を継承・発展させるものと喧伝されている。アベノミクスは3本の矢、1.大胆な金融政策、2.機動的な財政政策、3.民間投資を喚起する成長戦略からなっていたが、サナエノミクスはこのうち2を強調するものであり、「責任ある積極財政」とも呼ばれている。この経済政策を推進していけば、アベノミクスによって下げられた円の価値はさらに下がり、物価は上昇し、国民生活はより苦しくなっていく。
事実、アベノミクス開始後、円安により株価が上昇する一方で、物価の伸びに賃金が全く追いつかず、国民はどんどん貧しくなっていった。
実質賃金はアベノミクス開始前より低い水準のままである。これを継承するサナエノミクスは、史上最悪のエネルギーショックに襲われている日本の状況を、さらに悪化させるであろう。
ドルベースで見ると、2026年5月現在の名目GDPはアベノミクス開始前の3分の2にすら満たない。これが世界における日本の位置であり、真の姿である。100以上のグラフや公的データを用いて、アベノミクスとは何か、それを継承すると喧伝するサナエノミクスが日本に何をもたらすかを明らかにする。

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