顧客の体験価値が失われたアメリカのスターバックス

日本では極めて好調なスターバックスだが、本国アメリカでは苦戦中だ。2026年1月から3月までの北米の純増店舗数は25店。前年同期間は90店舗を新規出店していた。

2026年は空港や病院、ホテルなどの直営店とは異なるライセンス店舗を19店舗閉鎖している。3月時点で北米の店舗数は1万8385店、アメリカは1万6944店となっている。

本国のスターバックスの営業利益は4割近く増加しているが、その背景には出店抑制によるコスト負担の軽減もある。

コロナ禍でアメリカのスターバックスはテイクアウトやドライブスルーの需要に最適化するようになった。それと同時にデジタル化による効率的な店舗運営を進めるようになる。デリバリー専門店も増やしていった。

しかし、コロナが収束して急速なインフレが進行すると、体験価値が薄れたスターバックスの相対的な割高感が際立つようになった。中間層や低所得者層を中心とした節約志向の高まりもあり、深刻な客離れに見舞われるようになる。

2022年9月に次期CEOに指名され、2023年3月にCEOに就任したラクスマン・ナラシムハン氏は原材料高を価格に転嫁する方針をとっていたが、店舗の売上が低迷すると割引キャンペーンを実施。ところが競合のカフェチェーンもこれに追随して値引き合戦となり、差別化を図ることができなかった。

スターバックスは最大のセールスポイントである顧客の体験価値を自ら薄めてしまい、競合のカフェチェーンと同様に価格で戦う状態になってしまったのだ。

ナラシムハン氏は約1年半ほどで早くも退任。後任は外食業界の再建請負人として名高いブライアン・ニコル氏が務めることになった。

ニコル氏は業績不振に苦しんでいたファストフード大手「タコベル」や、大腸菌による集団食中毒でブランドが毀損した「チポトレ・メキシカン・グリル」の経営を再建した人物としてよく知られている。

日本未上陸の米人気No.1メキシカンチェーン「チポトレ」(写真/shutterstock)
日本未上陸の米人気No.1メキシカンチェーン「チポトレ」(写真/shutterstock)

スターバックスは大規模な店舗再編を発表。飲食スペースがない店舗の多くを閉鎖し、座席の改善やコンセントを増設して居心地の良い店舗への転換を進めている。

また、スタッフに週給制を導入し、チップ制度の拡充などインセンティブの強化も図った。カップに油性ペンで書くメッセージ文化も復活させている。

顧客の体験価値を高めるため、組織の構造的な改革を進めているのだ。