日本代表の「最大化装置」

筆者は、森保監督の采配に異議を唱えることが少なくない。ただ、毎月最低でも2回は記事や動画のやり取りをする編集者から「ミムラさんは日本のメディアでもっとも長友選手のメンバー入りが必要だと言い続けてきた人ですね」と言われるほど、長友のメンバー入りの必要性は一貫して主張してきた。

失意のアジアカップやその後の日本代表の戦いを現場で取材し続けてきたからこそ、この件については森保監督の決断は正しいと感じる。

それに、長友がチームのために行動するのは練習や試合の時だけではない。ホテルでの食事の時間に、説教くさくならないように気を遣いながら、過去に4度もW杯に出場した経験を長友は話してくれるのだろう。

苦しい時の心構えはもちろん、チームが順調に結果を残しているときに気をつけるべきことまで、様々だという。そういうことができるところにも、彼の価値はある。

事前合宿でアピールする長友。モンテレイ近郊にて 写真/共同通信
事前合宿でアピールする長友。モンテレイ近郊にて 写真/共同通信

日本代表は6月2日の午後にメキシコのモンテレイに入り、事前キャンプを行なった。W杯の第2戦のチュニジア戦が行なわれるこの都市は高温で知られるため、ここで5日間にわたって練習をすることで、暑さに身体を慣れさせるためだった。

しかし、当初予定していたグラウンドの芝生の状態があまりに悪かったために使用をとりやめ、グラウンドを転々とすることになった。そのうちの1つは、選手たちのホテルから車で優に30分以上かかる場所だった。いきなりのハプニングだったが、長友はこう語った。

「移動が多くなるとか、グラウンドの状態が全然違うとか、そういう場面でナーバスにならないように声かけはしたいなと思います。環境をネガティブに捉えるのか、ポジティブに捉えるのか……前を向かせるような雰囲気にしていきたい」

モンテレイ合宿ではそんな言葉の通り、ウォーミングアップから戦術練習にいたるまで、グラウンドには長友の大きな声が響き渡っていた。

日本代表が優勝という目標に向かっているとはいえ、現時点で優勝候補の筆頭とはかけ離れている。すべてが上手く転がり、持てるポテンシャルを全て発揮して初めて、頂点に手が届くような位置につけている。

だからこそ、レバレッジをかける必要がある。そのとき、長友佑都は、日本代表の「最大化装置」となるのである。

取材・文/ミムラユウスケ