リクルート事件は“構造改革利権”の始まりだった

もっとも竹下政権は長続きせず、短命に終わった。原因は政治とカネ問題である。

平成の幕が開いたばかりの1989年2月、東京地検特捜部は前年から取り沙汰されていたリクルートグループ株を使った賄賂工作の本格捜査に乗り出した。リクルート事件が竹下政権を直撃し、この年の6月、首相の竹下は内閣総辞職に追い込まれる。

株式上場を前にした不動産業のリクルートコスモスの未公開株が、政官界のみならず経済界やマスコミにまで大掛かりにばら撒かれ、ロッキード事件以来の一大疑獄に発展したのである。

東京地検の最終ターゲットが中曽根とされ、中曽根政権で官房長官を務めた藤波孝生をはじめ、12人が逮捕されて有罪となった。

逮捕こそされていないが、コスモス株が渡った議員をざっと挙げると、中曽根本人のほか、竹下登や安倍晋太郎、宮澤喜一といったニューリーダー、渡辺美智雄や森喜朗、小沢一郎といった大物議員のオールキャストだった。

リクルート事件は未公開株の譲渡を新手の賄賂と見なした点が画期的だと評価されたが、構造的には従来の政治とカネを巡る汚職事件と変わらない。

ただし、旧来の贈収賄事件と異なる点もある。贈賄側のリクルート創業者の江副浩正は、中曽根が生み出した規制緩和という利権に食い込もうと電電公社から民営化されたNTTに接近した。ごく簡単にいえば、通信の自由化によって生まれたビジネスチャンスに目をつけ、賄賂攻勢をかけていたのである。

規制緩和、構造改革という見栄えのいい政策にも利権が発生し、営利企業がそこに食いつく。それは自然の流れでもあった。ビジネスの世界で新参者だった江副が新たな利権に一枚噛もうとして賄賂を使った。それがリクルート事件の本質ではないだろうか。

そして、この政治とカネ問題は現在もなお尾を引き、ほとんど解決できていない。未公開株は自民党の派閥領袖クラスや野党幹部にも行きわたり、ロッキード事件以来の衝撃が政界に走り、自民党は政治改革大綱なる改革案をまとめた。そこで自民党は派閥の解消を目指した。だが、なし崩しになる。

リクルート事件の摘発から30年以上経た2022年11月、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」の報道から火のついた派閥の裏金問題もまた、高市早苗政権の今なお燻り続けている。まさしく歴史は繰り返してきたといえる。