政府が否定したのは「量が足りない」という論点だけ
これでは価格転嫁できない中小企業から順に倒れていく。こうした状況に対して「自由経済における淘汰は仕方ない」という声が一部から上がる。しかしこれは的外れな議論だ。
自由な競争の結果として企業が淘汰されるなら、それは市場の論理だ。しかし今起きていることはそうではない。
ホルムズ海峡封鎖という地政学的リスクへの外交的対応の失敗、そして国民負担率48%という過度の税負担が消費者の購買力を奪い続けた結果として企業が追い詰められているなら、それは市場の失敗ではなく政府の失敗だ。
責任の所在がまったく異なる。自由経済で淘汰されるのと、政治の失敗で潰されるのは、まったく別の話である。
政府が否定したのは「量が足りない」という論点だけだ。価格が上がっているという事実は、一度も否定されていない。なぜなら否定できないからだ。財務省の貿易統計という政府自身のデータが、単価64%上昇という現実を示している。
都合のいい数字を前面に出し、都合の悪い数字は語らない
これが高市政権の情報戦略の本質だ。都合のいい数字を前面に出し、都合の悪い数字は語らない。専門家やメディアを「デマ」と叩くことで批判の矛先を変え、価格という本質的な問題から国民の目を逸らす。
支持率を意識した政権運営にとって、「物価が上がり続けている」という事実を正面から認めることは、自らの対応の不手際を認めることに直結するからだ。
高市首相の「心配いただかなくていい」発言から1か月以上が経った。本当に心配しなくていい状況になったか。答えは、スーパーの売り場が出している。
6月、食品だけで559品目が値上がりする。カルビーのポテトチップス、明星の即席麺、味の素のスープ、キユーピーのドレッシング——毎日の食卓に並ぶものが軒並み値上がりする。帝国データバンクの調査では、値上げ要因として包装・資材費の高騰を挙げた企業が81.3%に達した。その包装資材の原料が、ナフサだ。
価格が上がったのは不安を煽ったメディアのせいでも、パニック買いをした消費者のせいでも、目詰まりを起こした流通業者のせいでもない。ナフサの輸入単価を64%上昇させた現実に対し、外交と内政で手を打てなかった政府の失敗だ。
それなのに政治家がやったことは、専門家の警告を「デマ」と叩き、報道を「事実誤認」と切り捨て、流通の「目詰まり」という言葉で現場に責任を押しつけることだった。













