環境への影響を評価する手続きが形骸化
インドネシアの事例は、財務的な破綻にとどまらない。自然環境や地域社会にも甚大な被害をもたらしている。事前に決められた環境アセスメント、すなわち環境への影響を評価する手続きがいかに形骸化していたかが明らかになっている。
古くからあった排水路が埋め立てられ、雨季になると沿線地域で深刻な洪水が頻発するようになった。トンネルを掘る際の発破作業では、住宅が密集する地域で多数の建物の壁に亀裂が入る物理的な被害が出た。
にもかかわらず、企業側の補償対応は遅々として進んでいない。住民の平穏な生活を脅かし、数千世帯に立ち退きを強いておきながら、責任ある対応をとらない。
工事の過程で4万人の雇用を生んだと主張する一方で、沿線にあった昔ながらの仕事が奪われ、地域の農業や水供給にも悪影響を及ぼしたという指摘もある。現地の自然と人々の生活を犠牲にしてつくられたインフラが、現地社会に歓迎されるはずがない。
インドネシアだけではない。アフリカの状況も見てみよう。
ケニアでは、天文学的な赤字を垂れ流す
アフリカは一帯一路における最大の投資受入地域であるが、鉄道事業の失敗と国家へのダメージは顕著である。ケニアでは、首都ナイロビと港町モンバサを結ぶ新しい標準軌鉄道がつくられた。
物資を運ぶ大動脈として稼働し、記録的な量の貨物を運んでいる。しかし、ケニアにおいても中国からの借金に対する利払いが重くのしかかり、鉄道会社は天文学的な赤字を垂れ流している。
経済メディア『The Kenyan Wall Street』は、「ケニア鉄道公社、SGR融資コストで280億シリングの損失を計上」という記事で、次のように報じている。
「ケニア鉄道公社は2025年度、SGRの貨物輸送量が過去最高の705万トンに達し、営業損失を縮小させた。しかし、中国からの融資に対する約259億ケニアシリング(320億円)に上る利払いが重くのしかかり、最終的に約281億ケニアシリングの純損失を計上する結果となった。巨額の利払いが営業利益の改善を完全に無意味にしている」
鉄道を走らせれば走らせるほど赤字が膨らむという矛盾を抱えている。お金の問題だけではない。ケニアの鉄道建設は、取り返しのつかない自然破壊をもたらした。
線路は野生動物の楽園である国立公園を真っ二つに分断してしまった。ゾウなどの動物たちが昔から移動に使っていた道が塞がれ、生態系に深刻な影響を与えている。工事に伴う騒音や粉塵、建物のひび割れといった被害が周辺住民を苦しめている。













