テスラのシンボル「明から暗への反転」
マスクの奇矯とも思える言動の根源に、子どもの頃に愛読したSFがあることはよく知られている。いわばテクノロジーのちからによって、SFの世界を現実のものにしようとしているのだ。
映画『アイアンマン』のモデルになったように、当初のマスクは風変りではあるものの陽性のキャラで、人類を「絶滅」から救うために(まさにSF的に)奮闘する起業家というイメージだった。
政治的には、民主党(バラク・オバマ)を支持するリベラルだったことを本人が認めている。その頃のテスラのシンボルは2008年に販売が始まったスポーツカータイプのEV「ロードスター」だが、23年になるとそれがピックアップトラックの「サーバートラック」になる。この変化を著者たちは次のように書く。
「チェリーレッドのロードスターが持っていた遊び心のある華やかさは(サイバートラックから)消え失せていた。その代わり現れたのは、無塗装のステンレススチールで覆われた巨大な乗り物――スポーツカーというより装甲をまとった殻のようだった。戦場から市中の大通りへと珍しい転身を遂げた1990年代のハマーを思わせるものだったが、生き延びることを主眼としたサバイバリストの美学をより露骨にまとっていた。これは『より良い世界』のための乗り物ではなかった。そのあとに来るであろう世界のための乗り物だった」
サバイバリストは、聖書の黙示録で描かれたような世界の終末が訪れると信じ、それでも生き延びられるよう準備する者たちをいう(「プレッパー」とも呼ばれる)。テスラのソーラーパネルやホームバッテリーのパワーウォール、スペースXのスターリンクは、「プレッパーが必要とするすべてのもの」を提供している。
明から暗へのこの反転は、マスクがクリーンエネルギーによる明るい未来を無邪気に信じられなくなり、よりディストピア的な未来を予感したことと関係していると著者たちはいう。
この暗いビジョンはどこから現われたのか。それを知るためのキーワードが「サイバネティック・コレクティブ(人と機械の融合ネットワーク)」だ。













