なぜアルツハイマー病は「第3の糖尿病」と呼ばれるのか

一般的に糖尿病といえば、血糖値が高くなる病気というイメージがあるでしょう。

しかし近年、世界中の研究者の間で、「アルツハイマー病を3つ目の糖尿病として、『3型糖尿病』と呼ぶべきではないか」という議論が活発に行われています。

なぜ脳の病気が糖尿病の仲間入りをするのでしょうか?

その鍵となるのが「インスリン」です。

私たちがよく知る糖尿病には、主に1型糖尿病と2型糖尿病があります。

1型糖尿病は、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンが体の中から失われ、血糖値が上昇する病気です。インスリンを作る工場(膵臓のベータ細胞)が破壊されてしまうイメージです。

一方で2型糖尿病は、インスリンが体内で作られてはいるものの、その量が不足していたり、あるいはうまく働かなくなったりして血糖値が上昇する病気です。

インスリン工場が老朽化して生産量が落ちたり、作ったインスリンが効きにくくなったりするようなイメージです。

1型も2型も、インスリンが発症の鍵となっています。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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さて、ここからが本題です。

私が医学部で学んだ頃は、「インスリンの役割は、血液中の血糖値を下げることだ」と教わりました。

しかし1970年代後半あたりから、なんと「脳の中にもインスリンが存在する」ことが指摘され始めていたのです。

しかも脳の中でのインスリンの役割は、血糖値を下げることとはまったく異なります。

脳の中でインスリンは、「学習」や「記憶」を司る脳神経細胞同士の情報伝達をスムーズにしたり、脳神経細胞そのものを保護したりする、極めて重要な働きをしていることがわかってきたのです。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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さらには、脳内のインスリンは記憶や学習をスムーズにすすめるだけでなく、アミロイドβなどによる攻撃から脳神経細胞を守る役割も果たしています。

インスリンが脳の中でその力を十分に発揮できていれば、脳神経細胞が守られ、アルツハイマー病は発症しにくい、あるいは進行しにくいということになります。

血液中の血糖値が上昇する「糖尿病」も、脳の機能が低下する「アルツハイマー病」も、ともに「インスリンが十分な力を発揮できない」という、まさにインスリンの異常が根本的な原因として深く関わっていることが明らかになったのです。

こうした最新の科学的知見から、従来の1型、2型に続いて、アルツハイマー病を「3番目の糖尿病」、すなわちインスリンが影響して引き起こされる症状の仲間として「3型糖尿病」と位置づけるべきではないか、という考え方が提唱されるようになりました。

この3型糖尿病の前段階として、糖の影響で毒されつつある脳こそが、私が「糖毒脳」と呼んでいる状態です。