所在地に強みあり

なぜ、一泊何十万円もするホテルが増えているのだろうか。

前述のとおり、政府は2030年に6000万人のインバウンドを獲得する目標を掲げている。国際的な知名度のあるマリオットやヒルトンなどの最高級ブランドホテルがあれば、旅先としての信頼感は高い。また、再開発や国際化を進める地元自治体などの思惑もある。世界的な国際会議や見本市、スポーツイベントなどの誘致活動において、知名度がある外資系高級ブランドホテルの存在は大きな決め手になる。

東京、京都、ニセコなど、外資系高級ブランドホテルがある都市やリゾート地は、この先も生き残る可能性が高いと筆者は考える。こうしたホテルは、しがらみや先入観なく、単純にグローバルな視点から①ビジネスとして採算がとれるのか、②成長性はあるのか、③運営委託方式でリスク回避、④自社ブランドに貢献するのか、といった合理的な観点から立地や投資が選ばれているはずだからだ。

マリオットなど米系大手3社は、世界最大のニューヨーク証券取引所やナスダック市場に上場している。エヌビディアやマイクロソフト、アルファベットといった他の上場企業と同じように、①資本コスト、②株価向上、③ガバナンスを常に意識しており、売上高、最終利益、ROEやPBRはもちろん、客室稼働率、客室価格、客室平均単価、収益力の目安となる「1部屋あたりの売上高」などを重視して、日々、世界中の投資家の目線に晒されながら、株価と時価総額を意識した経営がなされている。

世界最大級のホテルチェーン「マリオットホテル」(写真/shutterstock)
世界最大級のホテルチェーン「マリオットホテル」(写真/shutterstock)
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「外資系高級ブランドホテル進出」というシンボリックな大型開発が進行中であること。これは、国内外の多くの事業者・投資家が安心して事業継続や不動産投資を行うことができるエリアであることを示していると言える。

一般に、外資系ラグジュアリーブランドホテルがある地は、別荘やコンドミニアム、セカンドハウスのニーズも高く、かつ地価の上昇も続いているため、国内外の富裕層から投資対象として売買されるケースも多い。こうした状況が更なる不動産価値の上昇を生み、ブランド化を推し進めるという好循環を生むことにもなる。

文/高橋克英

『超富裕層に「おもてなし」はいらない 世界の一流が日本に惹かれる本当の理由』(講談社)
高橋克英
『超富裕層に「おもてなし」はいらない 世界の一流が日本に惹かれる本当の理由』(講談社)
2026/4/9
1,210円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4065435502

日本随一のスキーリゾート地としてその地を確固たるものにする北海道・ニセコ。日本全国のリゾートでは「第二のニセコ」を目指し、各地で開発競争を行っているーー。なぜ国内外の富裕層はリゾートを求め、投資や消費を繰り返すのか。その背景には、金融政策やAI時代の幕開けによる「世界的なカネ余り」と「退屈なひまな社会」の到来がある。
本書では白馬、石垣島など話題のリゾートの現況や世界的ブランド「ルイ・ヴィトン」が日本に進出する理由などを事例に、「富裕層はどういう性格をしているのか」「富裕層はどういう場所・モノ・コトにお金を落とすのか」を読み解いていく。ロングセラー『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか 「地方創生」「観光立国」の無残な結末』の著者・高橋克英氏が、富裕層との実際のやりとりやリゾートでのヒアリングをベースに分析した一冊。

目次
はじめに 「富裕層の性格」を理解することの大切さ
第1章 依然としてニセコが国内ナンバーワンリゾートに
第2章 世界的な「カネ余り」と「退屈でひまな時代」の到来
第3章 ニセコの発展でわかった「世界的リゾート」になる条件
第4章 進む「東京一極集中」と地方の選別
第5章 「ルイ・ヴィトン」が先導する勝ち組・負け組都市
第6章 富裕層を虜にする「ブランデッド・レジデンス」錬金術
第7章 なぜ富裕層は「外資系高級ブランドホテル」をベンチマークにするのか
第8章「NOT A HOTEL」が富裕層を惹きつけるカラクリ
第9章 実は富裕層とタワマンは相性が悪い
第10章 海外富裕層に「おもてなし」は不要
終章 富裕層から学ぶ「投資の鉄則」

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