「金太郎、砂嵐に降りる。」(集英社文庫・コミック版6巻収録)
金太郎がネクタイを投げ捨てる
『サラリーマン金太郎』第52話で金太郎は、サラリーマンの“証”を投げ捨てる。
初めての飛行機に乗り、海外赴任でアフリカのナビリアにやってきた金太郎。飛行機から見た景色は「火星に来たみたい」と評すほど赤茶けた大地だった。
空港に降り立ってからも砂嵐はすさまじく、ヤマト建設の社員たちは「ほんとに人が住んでんのか……ここに……」と思わず漏らしてしまう。
そんなとき、金太郎のネクタイが宙を舞う。取れてしまったのではなく、金太郎が自ら外して放り投げたのだ。
そして彼はこう言う。「今までも何のためにやってるのか知らなかったが、ここじゃあネクタイなんか、何の役にも立たねえよ」と。そうして不敵な笑みを浮かべながら、砂嵐を突き進んでいく。
よく考えてみれば、ネクタイとは何なのか。諸説あるが、17世紀、フランス軍に仕えたクロアチア兵の首元のスカーフが起源とされ、そこかヨーロッパに広がったという。それが今ではすっかり、会社員やビジネスマンの象徴のような存在になっている。
だからこそ、金太郎がそれを捨てる場面には意味がある。ただワイルドさを見せるためではない。この先に待っているのが、ネクタイを締めて体裁を整えていればどうにかなるような世界ではない、ということの表れなのだろう。
また面白いのが日本のクールビズ。日本で環境省が2005年に始め、室温を28度程度に設定し、ノーネクタイ・ノー上着で働くことを勧めるものだった。
そう考えると、アフリカの砂嵐の中で真っ先にネクタイを放り投げた金太郎は、時代を先取りした“実践派クールビズ”だったのかもしれない。























