人類全体にとってマイナスでしかない「全員が敗者」の戦争
仮にイランがホルムズ海峡に対する実効支配に近い影響力を持ち、通航に対するコストが恒常的に発生するのであれば、それは一時的な地政学リスクでは終わらない。エネルギー価格そのものが構造的に押し上げられることになる。
原油価格はイベントで上下する対象ではなく、常にリスクプレミアムを内包した状態へと変わる。そしてその影響は、時間差を伴いながらも確実に世界経済へと波及していく。
ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナ、アフリカではスーダン、サヘル、コンゴ、ソマリア、エチオピア、さらにはアジアに目を向ければインド、パキスタン、アフガニスタンと、現代の戦争には明確な勝者が存在しない。
言い換えれば、全員が敗者である。民間人が命を落とし、有限であるエネルギーは攻撃に費やされ、油田や製油施設、貯蔵インフラまでもが破壊されていく。大袈裟に言えば、人類全体にとって純粋なマイナスでしかない。
それにもかかわらず、市場は上がることがある。いや、むしろ上がってしまう。最悪のシナリオが回避されたという、その一点だけを理由に……。今回もまた同様であろう。
いつ上昇局面が訪れるのか
ある程度、事態が収束に向かえば、日本株は反発し、むしろ力強く上昇する局面すら訪れる。
そのシナリオ自体は難しい話ではない。中東情勢の緊張が一服し、「最悪は回避された」という認識が広がれば、売り込まれていたポジションの買い戻しが入り、海外資金も再び日本株に流入する。
円安基調が続く限り、輸出企業の業績期待も維持され、指数は見かけ以上に戻る可能性がある。しかし、その上昇の本質を見誤ってはならない。それは回復ではない。錯覚である。
なぜなら、その裏側では何も解決していないからだ。むしろ、円安と原油高が同時に進行する中で、輸入コストの上昇はすでに現実のものとなっている。
エネルギー、物流、食料といった生活の根幹に関わる分野で、10%前後の値上げ圧力が静かに積み上がっている。このコスト上昇は企業収益を圧迫し、最終的には個人消費を削る形で経済全体に波及する。
そしてこの影響が本格的に表面化するのは、いまではない。半年後、あるいは1年後だ。そのとき、統計ではなく、生活実感として我々を直撃する。













