サイバー攻撃、ディープフェイク…それでも失われないアルバムの価値
近年はセキュリティ面でのリスクにもさらされている。数年前、工場のシステムに外部から不正侵入を受けたという前出の「斎藤コロタイプ印刷」の担当者は次のように説明する。
「工場のシステムへの不正侵入はサイバー攻撃によるものでした。セキュリティに関しては、専門機関によるフォレンジック調査を受けた上で、調査に協力していただいたシステム会社さんから提案をいただき、新しいシステムに入れ替えて現在の運用に収めています。仕事量に関しては、前年度と比べて2割くらい減りました。ただ、今はどんな企業でも攻撃の標的にされます。それなりにしっかりとセキュリティはやってきたつもりでも、わずかな隙間を縫って入ってこられたというのが実情です」
さらには、卒業アルバムの写真が生成AIによって性的な画像に加工され、拡散されるという「ディープフェイク」による被害も急増している。警察庁の把握では、生成AIを悪用した相談・通報は2024年に100件を超え、その多くが同級生同士のトラブルだという。
首都圏の公立小学校に勤める30代男性教諭は次のように懸念を示す。
「卒業アルバムのデータ流出はデジタル性暴力につながりかねない事態です。私の学校では今年度はアルバムの制作を控えるという話は出ませんでしたが、今後そうなる可能性もあります。卒業アルバムは児童らが本当に喜んでいて、なくしてはいけないもの。児童をどう守るかの議論が必要ではないでしょうか」
「仕組みづくりが必要」と話すのは、デジタルセキュリティサービスを手がける「リチェルカセキュリティ」の木村代表取締役社長だ。
「性的ディープフェイクの問題について、『フェイク画像かどうか』を判断して対策する手法には限界が来ていると考えています。これらの手法は、AIによって加工された際に残る独自の痕跡を発見したり、加工前の画像そのものに証明情報や識別情報をあらかじめ埋め込むことで実現されますが、いずれも比較的容易に迂回されるものであり、いたちごっことなります。
現実的かつ最も強力な防衛策は、性的ディープフェイクの素材として使われる画像を確実に保護し、流出させない、あるいは流出を検知し素早く削除を行うための仕組みづくりです」
前出の「ダイコロ」の松本社長は「逆説的なものの言い方ですが、卒業アルバムがなくなれば、ディープフェイクなどの問題もなくなるのかというと、そうではないと思います」としたうえで、卒業アルバムの「価値」について次のように話す。
「6年間、3年間の思い出を、1冊の共通の本という形で持つということの価値は、まだまだ尊重されるべきなのかなと思います。大きな災害が起こった後、少し生活が落ち着いてくると、『卒業アルバムをもう一回作れないか』とか『アルバムの複製をお願いできないか』という問い合わせを受けることがあります。私どもは、もう一度複製して送り届けるというボランティアをやっていますが、やはりかけがえのない学生時代の思い出を本にするということは大切ではないでしょうか」
保護者、学校、写真館、印刷会社など、多くの人の手によって作られる卒業アルバム。その本当の価値を実感するのは、遠い未来のことなのかもしれない。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班













