一方で「半数程度の職員は不満」

しかも、和泉市の改革は、初任給だけを盛った単純なキャンペーンではない。募集時期を従来より約5カ月前倒しし、テストセンター方式の導入で全国から受験しやすくした。加えて、市内居住者への住宅手当インセンティブ、副業基準の明確化、人事評価制度の見直しなど、働き方やキャリア形成も含めて「選ばれる職場」に変えようとしている。

自治体が民間企業の採用競争に近い発想を取り入れた点に、この改革の新しさがある。前出の人事課担当者に1年ぶりに取材したが、今年度の新卒1年目職員から一定の手ごたえを感じているという。

「今年度の新卒採用者から退職者は1名出ましたが、一般的な民間企業の離職率と比べると決して悪くない数字だと思います。今後の課題としては、彼らが5年後、10年後と定着することが課題です」


和泉市にある「道の駅 いずみ山愛の里」(写真/PhotoAC)

和泉市にある「道の駅 いずみ山愛の里」(写真/PhotoAC)

だが、成果が鮮やかなほど、課題もまたくっきり見える。和泉市自身が認めているように、「高い初任給」がそのまま生涯賃金の高さを意味するわけではない。市側は「その後の昇給スピードは決して高くない」と説明し、役職につかない限り他自治体より給与水準が下がるケースもあるとしている。

実際、改革の骨格は、年功的に上がる給与カーブを見直し、役職者や評価される職員に報いる仕組みへ再配分するものだ。つまり、新卒・若手の入口を引き上げる一方で、非役職の中堅・ベテランには“もう上がらない”という現実を突きつける制度でもある。

そこに最も強い痛みを感じるのが、30代、40代、さらに50代の既存職員だろう。和泉市は労組と協議を重ね、現行給与を保障する制度も導入したが、それでも「モチベーションが下がる」という声は残った。

「実際、役所内でアンケートを行なったところ、職員の半数程度が現行給与体系に不満との回答だったという結果がでました。『安定を求めて公務員になって市役所に入ったのに…』『旧制度のほうがよかった』といった声もありました。

しかし、そうした中堅職員の原資が自分たちの給与になっていることを新卒1年目の子たちも十分理解しています。やはり、彼らがしっかり定着することが大切になってくると思います」

人事課担当者も「非役職職員の中には『もう給与が上がらないのか』という不安や不満の声があった」と認めている。