立場が上の人は裏表に気づきにくい

裏表人間の本性に上司が気づきにくいのは、このように上司が置かれた立場によるところも大きいわけだが、また別の立場上の問題もある。

同僚同士だと、自分の前と上司の前とでまるで別人のように態度を変える様子をしょっちゅう目にしているため、裏表の二面性を目の当たりにする機会が十分すぎるほどある。

だが、上司や他部署の上役は、自分の前の様子しか知らないため、ふだん別人のように振る舞っているのを見ることがない。裏の顔を見ていないのだから、極端な二面性に気づくことができない。

だれにも多かれ少なかれ二面性はあるものだし、人の上に立つ人間にはそのくらい見抜く力をつけてほしい、二面性を警戒する心構えをもってほしいものだと言いたくなるかもしれない。

「私も当初はそう思ってました。上司なら部下の本性を見抜く目をもってほしいって。でも、調子のいい同僚とかを見ているうちに、それは難しいかもなと思うようになりました。

上司にしてみれば、とにかく目の前では感じがいいのだから、気分がよくなるのもわかります。結局見抜くのを期待しても無駄だって思うようになりました」

このように諦め顔でこぼす人もいる。

裏表の使い分けが激しいタイプは、上の人の気持ちをくすぐるような言葉を発するだけでなく、上の人に重宝がられる行動を目ざとく察知し、素早く行動に移すため、実際に上の人は助かる。

自分のために動いてくれるわけだから、裏表の二面性に気づかないだけでなく、頼りになるヤツ、自分のために献身的に動いてくれるヤツと思い、好意的に評価することになる。

結局のところ、上の人の目に映るのは、行動であって内面ではない。自分にとって役に立つ行動を取ってくれるのは、だれだってありがたい。それが打算によるものなのか、自分に心から傾倒しているためなのか、それはわからない。

ましてや、陰で自分のことをこき下ろしているのか、あるいは自分のいない場面でも自分に傾倒しているようなことを言っているのか、それを実際にしてくれたことから推し量ることなど不可能である。

考えてもわからない裏の意図は棚上げした場合、役に立つ行動を取ってくれて助かるのは事実である。そのため、動機を詮索するよりも、自分の手助けをしてくれる部下を好意的に評価することになりがちなのである。

内面よりも実利があるかで評価される(写真/shutterstock)
内面よりも実利があるかで評価される(写真/shutterstock)
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『裏表がありすぎる人』(幻冬舎新書)
榎本博明
『裏表がありすぎる人』(幻冬舎新書)
2026/1/28
1,034円(税込)
200ページ
ISBN: 978-4344987951
職場の人間関係は、ほんとうに面倒だ。
なかでも厄介なのが、裏表の激しい人の存在である。
そうした人物は相手によって態度を使い分け、本性を見せる人と見せない人を選ぶため、被害の実態が周囲に伝わりにくい。
しかも皮肉なことに、そういう人ほど上には気に入られ、出世する。
そんな人物が身近にいると、ストレスが溜まる一方で、心がすり減ってしまう。
そこで本書では「裏表がありすぎる人」の心理メカニズムと行動原理を読み解き、彼らへの対処法を提示する。
人を見る目が一段と深まり、神経の消耗が激減する一冊。
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