「保育園落ちた日本死ね」からちょうど10年
大阪府内で認定こども園を経営する60代の理事長は大津市の条例改正案に理解を示しつつも、自治体レベルではない給与の賃上げなどが必要だという。
「実際、以前から幼稚園と保育園の一体運用や給与制度の統一を進めてきた自治体はあります。今回の大津市の問題は『統一すること』自体より、『統一のやり方』、既存の教職員が不利益となり得る変更や丁寧な説明が必要だと思います。
2016年2月に『保育園落ちた日本死ね』という投稿が話題になってちょうど10年経ちますが、待機児童の数は全国で8年連続減少し、昨年は過去最少を更新しました。ですが、大津市は全国で最も待機児童数が多く、注目が集まりやすい。
そんな状況で、ただでさえ社会全体でも『賃上げ』が叫ばれているのに、『賃下げ』なんて見出しが出ると反発を買うのは当然とも言えます」
大津市の場合、「待機児童」が全国最多であるという前提事情がある。こども家庭庁の全国集計(令和7年4月1日)では、全国の待機児童は2,254人まで減り、100人以上の自治体は1市だけとされる。
「令和7年4月1日の待機児童数は132人」と市が公表していることから、その“1市”が大津市であることがわかる。つまり日本全体では待機児童が縮小しているのに、大津市は突出して解消が難航していて、柔軟な人員配置がなければ、現場が回りにくい状況である。
大津市は市の公式ホームページで「市立幼稚園・認定こども園一覧」を公開している。幼保一元化が“これから初めて起きる”というより、形態は混在しつつも、待機児童の深刻化に合わせて「採用と配置をより横断的に行なう」という方針が高まっていると言える。
大津市が直面するのは、全国でも例外的に多くの待機児童数(132人)がいるという現実であり、人材の確保・配置転換・多施設展開を同時に進めないと解けない構造問題でもある。だからこそ、今回提案のあった幼稚園教員と保育士の人材交流という制度そのものは理解され得る一方、現場の教職員の「賃下げ」という状況になると、現場離れや志望者減を招き、本来の目的を損なう危険性がある。
自治体側に求められるのは、
・今いる職員の給与や待遇が急に悪くならないよう、段階的に移行する、不利益を抑える仕組みにする。
・業務の重さや責任の違いをふまえて、必要に応じて手当などの処遇を調整できる制度にする。
・賃金の話だけでなく、配置人数や担当業務、仕事量の見直しも含めて「負担と処遇のつり合い」を説明する。
・待機児童をいつまでにどれだけ減らすのか、数値目標とスケジュールを示す。
といったことだろう。
大津市は待機児童の状況が全国的にも目立つため、制度変更は注目されやすい。だからこそ、職務統合に伴う制度再設計であることを丁寧に示すと同時に、現場が不利益を受けない制度設計にすることが重要だ。
それこそが待機児童の解消と保育・教育の質の維持への近道になる。
取材・文/集英社オンライン編集部













