「食料品消費税」をゼロにすると物価が下がるという幻想

国民の多くは消費税をなくすことで物価が下がると信じているが、そう単純なものではないのも事実だ。むしろ物価高を助長する可能性すらある。

インフレには大きく2つの種類がある。需要の増加によって引き起こされる「ディマンドプルインフレ」と、原材料や人件費など原価が上がることで起こる「コストプッシュインフレ」だ。

アメリカでは2022年10月に消費者物価指数が1990年以来最大の伸び率を記録した。特に伸び率が高かったのが生活必需品だ。食料品は前月比で5.3%も上昇。米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ率の目標を2%と定めていたが、それを大きく上回った。

日本の日本銀行に相当する組織である連邦準備制度本部(FRB)(写真/shutterstock)
日本の日本銀行に相当する組織である連邦準備制度本部(FRB)(写真/shutterstock)

このとき、アメリカはコロナ禍からの反動で需要の急激な拡大が起こっていた。典型的な「ディマンドプル」によるインフレだったのである。

日本ではコメを例にとるとわかりやすい。2025年は空前のコメ高騰が庶民を襲ったが、2026年はコメ余りへの警戒感が強まっており、2026年産米は一部地域での減産が視野に入っている。これは農家が2025年は増産に動いたいっぽうで、店頭価格が高騰。消費が減退していることが背景にある。

こうした状況下で、もし2026年度内に消費税をゼロにして店頭価格を下げると、需要が旺盛になる可能性が高い。減産で供給が追い付かず、再びコメ高騰が起こってもおかしくはないのだ。

今のインフレは「コストプッシュインフレ」だと主張する人も多い。しかし、食料品の原価を押し上げている大きな要因は円安だ。アメリカ産牛肉などの輸入肉、小麦、食用油、大豆など多くの食料品は円安の影響を受けやすい。海外の飼料への依存度が高い鶏肉、卵も円安進行で価格高騰を引き起こしやすい。

円高に振れない限り、「コストプッシュインフレ」も解消しない。