この記事は2023年11月15日に書かれたものです。
所得税・住民税減税では景気対策にならない
岸田総理が年内の解散総選挙を断念したと新聞各紙が伝えた。内閣支持率回復を狙って11月2日に閣議決定した経済対策が不評で、支持率回復につながらなかったためだ。
経済対策の目玉は、所得税・住民税減税だ。物価高で苦しむ国民生活を救うため、岸田総理は「税収増を国民に還元する」と、住民税非課税世帯への7万円の定額給付に加えて、一人あたり住民税1万円、所得税3万円の定額減税を1年に限って実施することにした。
立憲民主党を除く野党からは消費税減税を求める声が出ていたし、自民党の若手国会議員102人で構成する「責任ある積極財政を推進する議員連盟」からも、消費税率を5%に引き下げたうえで、食料品については時限的に消費税率を0%とする政策提言が出されていた。
だが、そうした提案を岸田総理は一顧だにしなかった。
岸田総理の打ち出した所得税・住民税減税は、消費税減税と比べると、かなりの問題がある。第一は、物価高対策にならないことだ。消費税減税であれば、税率引き下げと同時に物価が下がるから、完全な物価抑制効果がある。
特に食料品は物価が9%も上がっているから、8%の消費税をなくせば、物価高の大部分を相殺することができる。国民も、経済対策の効果を毎日の買い物のたびに感じることができるのだ。一方、所得税減税は、所得を増やすので、理論上は、需給がひっ迫して物価をむしろ押し上げてしまう。
第二は、実施まで時間がかかることだ。来年度の税制改正を行った後、給料の源泉徴収額が変わるのは、来年6月になってしまう。自営業者が減税の効果を実感できるのは、2025年の確定申告のときだ。消費税なら法改正と同時に引き下げが可能だ。
第三は、一時的な減税は、貯蓄に回ることが多く、消費を拡大しないことだ。これまで行われた一時金給付の効果試算では、給付金のおよそ8割が貯蓄に回ってしまうことが明らかになっている。今回の対策では、減税の後に増税が待ち構えていることを誰もが知っているので、おそらくほとんどが貯蓄に回るだろう。つまり、景気浮揚の効果はほとんどないのだ。
そして第四は、減税にエアポケットが発生することだ。年間の所得税が3万円を超えるのは、専業主婦の妻がいる世帯で年収300万円程度以上だから、それ以下の年収の世帯は、定額減税の恩恵をフルには受けられない。政府は、そうした世帯に別途給付金を支給する方針だが、その結果、制度はますます複雑化する。
こうしたことを考えると物価高対策としては、所得税減税よりも消費税減税の方が、はるかに効率的で効果が高いのだが、岸田総理は消費税減税をそもそも検討対象にさえしていない。
国会審議で野党議員から、消費税減税と所得税・住民税減税の効果の比較を問われた岸田総理は、「消費税は社会保障財源であるため、引き下げは考えていない。そのため効果の比較も行っていない」と答弁した。効果を比較して政策選択をするというのは、最近の財政政策の基本になっている。なぜそれをしないのか。














