『ばけばけ』がぶっ刺さる視聴者層

ヘブンとトキの関係性についても、本作は丁寧な積み重ねを重視している。第65話で描かれた、二人が結ばれる場面を半澤氏は「完璧だった」と評しつつ、そこに至るまでのプロセスも高く評価する。

「女性が自分で結婚相手を選びにくい時代に、しかも相手は外国人。そんな環境下で、トキは自分の意思で相手を選んだ。それ自体、とても勇気のある行動だったと思います。しかも派手な告白ではなく、少しずつ気持ちが積み重なっていく。その過程を視聴者はずっと見てきたからこそ、心から感動できたと思います」

『ばけばけ』は、一見すると穏やかで静かな朝ドラだ。しかしその内側では、人と人の関係性、時代に翻弄される哀しさ、そして語り継がれる怪談の意味が、緻密に編み上げられている。

「戦争や男女平等など、大きなメッセージを声高に叫ぶ作品ではありません。でも、だからこそ、視聴者それぞれが切なさを噛みしめられる。ヘブンへの気持ちを知らず知らずに積み上げていくトキと、トキが横にいないとダメだったことに気付くヘブン、その一話ずつに盛り込まれる台詞やリアクションがとても巧妙なんです。ドラマとして非常に“正統派”で、丁寧な積み重ねを楽しめる人にこそ響く作品だと思います」

今後、新キャストの登場や舞台の変化を経て、物語はさらに広がっていく。没落士族の娘と異国の夫の物語は、どこまで深い余韻を残してくれるのか。髙石あかりの演技とともに、『ばけばけ』は朝ドラ史に静かに名を刻もうとしている。

本格的な夫婦の物語がスタートする『ばけばけ』
本格的な夫婦の物語がスタートする『ばけばけ』

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部