化粧まわし、実は、百貨店で取り扱っている

取材で相撲博物館の資料を閲覧し、事務所を出たときのことだ。観光客らしい年配の外国人夫婦から質問を受けた。

「あのエプロンは、どこで売っているんだ。いくつか買いたい」

エプロン? 一瞬、戸惑ったが、すぐにピーンと来た。英語のパンフレットでは、化粧まわしのことを「デコレイテッド・エプロン」(装飾エプロン)と表記することがあるのだ。

「土俵入り」の英訳はいくつかあるのだが、外国人向けの書籍で、こんな翻訳を見たことがある。

「エプロン・セレモニー」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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この夫婦は、土産に化粧まわしを買いたいというのだ。そこで、尋ねてみた。

「本当に買うなら業者を紹介しますが、いくらするのかご存じですか」

私たちはカネを持ってるぜ、といわんばかりに鼻で笑った夫婦。だが、最低100万円以上、しかも2ヵ月待ちは当たり前の特注品であることを伝えると、ドラマで見るような大仰な驚きのしぐさを見せ、「HAHAHA!」と笑い、私の肩をたたいて去っていった。いくらで買えると思っていたのだろうか。

英語で「装飾エプロン」と訳されている化粧まわしだが、前掛けのような形をしているわけではない。化粧まわしは幅約80センチ、長さ6~7メートルの巨大な1本の帯状をしており、その一方の端に、様々な図案が描かれている。

この図案が描かれた部分を「前垂れ」という。前垂れの下には馬簾という金糸などの房が下がるエプロンのような部分だ。土俵入りでは、この前垂れから後ろの部分を6つに折ってふんどしとして締め、土俵入りを務めている。

この化粧まわし、実は、百貨店で取り扱っている。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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十両土俵入りや幕内土俵入りで関取が締める化粧まわしとまったく同じものを百貨店で買うことができる。