病院食がまずいと栄養失調も懸念
私が若い頃留学したことのあるスイスでは、2004年にジュネーブ大学が、同大学付属病院の病院食について、1700人の患者を対象に調査を行っています。
結果は3人に1人が栄養失調のまま退院しているほか、入院中に栄養失調で体力や病気に対する抵抗力が低下して、入院期間が延びているケースが多いことがわかりました。
当時の同病院の食事予算は1日約850円が相場のフランスの約4倍あったとされていますが、それでも入院患者の栄養管理がうまくいってないということでした。
調査結果では、食事が「おいしくない」、「冷えてしまっている」、「選択肢が少ない」などの理由を挙げ、入院患者の5人に1人が病院食を食べていませんでした。また、4人に1人は入院していて食欲が湧かないと訴えていたということです。
この調査の結果を踏まえて、同病院では食事を見直すことになったといいますが、病院食のまずさはコスト以外にも理由があるようです。
病院食は医師の診断をもとに、管理栄養士が患者の年齢や病状などに合わせて、個別に栄養管理計画を立て、アレルギーの有無や嗜好を考慮して提供するとされています。
患者の嗜好が考慮されているなら、それなりにおいしい病院食になると思うのですが、私の母や養老先生のように、まずくて食べられないという患者さんがずいぶんいるような印象を受けます。
入院時に患者さんの食の嗜好を十分に聞き取って、栄養管理計画に反映させるなどの工夫が必要かもしれません。
それにしても、食事代のコストに関しては早急に見直す必要があると思います。日本病院会が金額見直しを重点項目とし、厚労省に22年度の診療報酬改定に向けて要望書を提出していますが、いまだ実現していません。
食事がとれずに栄養失調に陥れば、免疫力が低下し感染症のリスクも高くなります。その結果、入院期間も長くなるので、「たかがメシ」と考えず、医療関係者は真剣に考えるべきだと思います。
病院が変わらないのであれば、患者自身でなんとかすることも考えてよいでしょう。部屋は差額ベッド代を払えば、よい部屋に入られるのですから、自分の食べたいものを自費で購入することも認めてよいのではないでしょうか。
現状では、患者さんがこっそり外から持ってきてもらったものを食べている例は少なくないと思います。
病院としては大目に見ているのかもしれませんが、栄養管理計画から見ると、好ましくないわけです。
例えば、一定の条件をつけて外から出前をとることを認めるという考え方もあります。食事は生命力の源なのですから、患者さんの生活の質を維持するために、しっかり考えていくべきだと思います。
文/中川恵一














