病院食にかけるコストが安すぎる
実は高齢者施設にいるときから、母は施設の食事がまずいと、いつも不平をもらしていたのです。
母は東京の月島生まれで、施設は月島からほど近い晴海にあるのですが、そこから昔からなじみの寿司屋の出前をとっていたほどです。
私にも、宅配を使ってナントカという店の天丼を届けさせろとか、よく電話がかかってきました。
お菓子も、老舗のせんべいが食べたいとか、カステラが食べたいとか、言われるたびに届けさせていました。
施設の食事がまずいと言っていた母は、東大病院に入院して、病院食を食べたとたん、「すぐ帰りたい」と言い出しました。
「施設のメシのほうがまだましだ」と、病院の食事のことをボロクソにけなし始めたのです。
そのくらい病院の食事はおいしくないということです。母にしても養老先生にしても、高齢者はグルメな方が多いので、評判が悪いのもわかります。
病院食は、私も何度も食べてきました。検食といって、当直の医者の仕事だからです。最近はもう当直もやらなくなりましたが、わりあい最近まで検食をしていたものです。お世辞にも、おいしいとは言えません。
今は人が家で亡くなることは極めて少なく、ほとんどの人が病院で亡くなる時代です。先ほども言いましたが、みなさん人生で一番まずいものを食べて死んでいくわけです。そのことをよく考えてみる必要があると思います。
病院食は「入院時食事療法」といって治療の一部です。栄養管理が必要な施設は厚生労働省が定める特定給食施設といって、病院の他に学校や社員食堂、福祉施設、刑務所などがあります。給食にかかるコストは、病院食の場合は医療保険関連法によって、全国一律で1食分が690円と決まっています。このうち普通510円を患者が負担し、残りを保険者が支払います。ずいぶん安いと思いませんか。
病院食がまずい原因は、このコストが安すぎることが一因でしょう。特に最近は食材の値段がどんどん上がっていて、主食の米も以前の倍以上に値上がりしています。それでもかけられるコストは変わらないから、食事のクオリティはどんどん下がっていくわけです。














