席がなかったら、まだ人が来ていない予約席で即食べて帰ればセーフですよね?

お嬢様 今度発売予定の私がプロデュースした化粧品の打ち合わせが詰まっていて最近忙しいのよ。

松井弁護士 もう既に予約が入ってるみたいで、お嬢様の活躍ぶりはすごいね。

お嬢様 ランチを食べる時間があまりないから、この前ふらっとイタリアンに入って、予約席に誰もいなかったから、10分で食べて出るわって言ったらお店の人に断られちゃったのよ。まったく融通が利かないわね。

松井弁護士 おっとお嬢様。お忙しいのはわかるけど、たぶんお店も対応に考えがあるんだろうから、一緒に検討してみよう。

まず、予約席で食べる行為自体が直ちに犯罪になるというわけではない。しかし、予約席は、事前に時間とその席を使う権利を保障するものだから、お店側としては、いろいろなトラブルを避けるために、予約していない人に利用はしてほしくないという考えなんだろうね。

画像はイメージです(写真/Shutterstock)
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仮にお店側に断られたのに、強引に席を利用したり、退店せずにとどまったりすると、威力業務妨害罪(刑法234条)や不退去罪(刑法130条後段)にあたる可能性もあるので、お店との関係はあまり悪くしないほうがよさそうだ。

もし、威力業務妨害罪になった場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金。不退去罪となった場合は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処される。お店の言うことを聞かずに法律違反でランチを食べると、こんなに刑罰が重くなる可能性があるんだ。

お嬢様も疲れているみたいだし、法律違反しないでランチを食べられるくらいの時間がとれるように仕事を調整してみるのはどうかな。

まとめ 予約席で食べても犯罪ではない

要点1 他の人の予約席で食べること自体は、法律違反ではない
要点2 ただし、お店に断られたにもかかわらず予約席を使うと法律違反の可能性が出る
要点3 予約席を使うことを頼んでみて、お店に断られたら従うのがベター

刑法130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する。

文/松井浩一郎・アトム法律事務所

松井浩一郎、アトム法律事務所 著『それ犯罪です! 知らないとヤバい刑法の話』祥伝社
松井浩一郎、アトム法律事務所
松井浩一郎、アトム法律事務所 著『それ犯罪です! 知らないとヤバい刑法の話』祥伝社
2025/11/4
1870 円(税込)
272ページ
ISBN: 978-4396618520
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