オジーの父親が息子に告げた最期の願い
ところが退院後も誘惑には勝てず、正気を失う日々。音楽と法律の間で疲れ果てたオジーは、一文無しになった。1977年にはブラック・サバスを脱退するも、すぐに呼び戻された。
そんなある日、オジーのもとに一本の電話が入る。受話器の向こうの相手は、実姉の夫からだった。電話の内容は、全身を癌に侵されていた父親が危篤状態にあるという報せだった。
「神様は親父が亡くなる前に、俺と話す時間を与えてくれたんだ。親父はそれまで俺に一度も言ったことがなかったことを口にしたんだ。“タバコに気をつけろよ”“酒の問題をなんとかしろ”“睡眠薬を飲むのも止めるんだ”」
写真はイメージです(写真/Shutterstock)
オジーは小さくうなずきながら、父親の手を握りしめた。次の日、容態がさらに悪化し、父親の身体には生命維持のための管がつながれた。父親は息子に最期の願いを告げた。
「このチューブを抜いてくれ。痛いんだ」
1978年1月、父親は静かに息を引き取った。その年、ブラック・サバスは8枚目のアルバム『ネヴァー・セイ・ダイ』を発表するも、メディアからは酷評され、売り上げも芳しくなかった。結局、アルコール問題が改善されなかったオジーは、再度バンドを去ることとなった。
だが、オジーの本当の復活は、ここから始まるのだった。
オジー・オズボーン最後の参加作となった8作目のアルバム『ネヴァー・セイ・ダイ [SHM-CD]』(2010年4月21日発売、UNIVERSAL MUSIC)
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文/佐々木モトアキ 編集/TAP the POP
引用・参考文献
『I AM OZZY オジー・オズボーン自伝』(シンコーミュージック・エンタテイメント)
TAP the POP Anthology 音楽愛 ONGAKU LOVE Volume One
TAP the POP (著), 中野充浩 (著), 佐藤剛 (著), 五十嵐正 (著), 宮内健 (著), 阪口マサコ (著), 佐藤輝 (著), 佐々木モトアキ (著), 長澤潔 (著), 石浦由高 (著)
2025年11月30日
2,970円(税込)
14.81 x 2.95 x 21.01 cm
ISBN: 979-8276212906
〜「真の音楽」だけが持つ“繋がり”や“物語”とは? この一冊があれば、きっと誰かに話したくなる〜 「音楽が秘めた力を、もっと多くの人々に広めたい」 「音楽が持つ繋がりや物語を、次の世代に伝えたい」 そんな想いを掲げて、2013年11月にスタートした音楽コラムサイト『TAP the POP』(タップ・ザ・ポップ) 。本書は今までに配信された約4,000本のコラムから、140本を厳選した「グレイテスト・ヒッツ第1集」的アンソロジー。 TAPが支持するのは、楽曲に時代や世代の風景、試行錯誤が息づいているもの。アーティストやソングライターに、出会いや影響、美学が宿っているもの。そのような音楽には単なる流行やヒットを超えた、人の心を前進させる力や救済する力があるからです。 「大切な人に共有したい」「あの頃の自分を取り戻したい」「音楽をもっと探究、学びたい」……音楽を愛する人のための心の一冊となるべく、この本を作りました。どのページにも「⾳楽愛」が満ち溢れています。 この⼀冊が、物事について深く考えさせてくれるきっかけとなり、静かなる興奮と感動となりますように。⾳楽の旅路へようこそ。