残業ゼロで30%売上を伸ばした家具工房
昨年(2024年)の春に残業をゼロにしてから一年間継続できて素直に嬉しい。
全力で集中できるのはせいぜい1日8時間が限界だと思うし、同じ成果ならなるべく短い時間で終わった方が良いに決まっている。だから効果的に残業を無くすことで仕事の効率も上りスキルアップやチャレンジに時間を使えて、売上や利益率も伸びるだろうとずっと思ってはいたが、何事も口で言うのは簡単で実行するのは難しい。KOMAを立ち上げた20年前は徹夜なんて当たり前だったし、つい10年前も休みなく深夜まで働いていた。それから数年をかけて残業時間を2時間、1時間、30分と少しづつ短くしてようやくゼロにできた。
(中略)
あれから1年みんなで協力しあって一度も残業をしていない。その結果、売上は前期と比べて30%伸びた。
そして今では年間110日から最大130日の休みがあって、社会保険はもちろん長期休業保証も育児休暇も退職金制度、扶養手当などなど多くの手当や保証もある。
(「環境整備」KOMAウェブサイト 松岡茂樹さんのDiaryより)
松岡 自分が昔、家具会社で修行していたときって、親方や先輩は絶対教えてくれなかったんです。見ようとすると隠すぐらい教えてくれない。だから親方連中が帰った後に、一番切れる人の鉋をこっそり見て、「どんな形しているんだろう?」とか、「刃をどれぐらい出しているんだろう?」とか見ていたんだけど、それをやっているとやっぱり使ってみたくなる。
「どんな切り心地なんだろう?」というのを我慢できなくなって、こっそり切ってみたんです。すると次の日すぐバレた。「誰が使った? おまえだろう?」みたいに問い詰められて。俺がもし若い衆にそれをやられたら「かわいい奴だな」と思うけど、昔の職人はそんなこと思わないから、「勝手に俺の道具に触るんじゃねえ!」ってめちゃくちゃキレられて。
それは何故かというと、みんな雇われの職人だったから。若い衆が下から上がってくると、年齢が上の人たちって押し出し式で追い出されるんですよ。みんな自分のポジションを守らなきゃいけないから、若い職人を本気で育てる気にならない。
俺は職人だけど社長でもあるから、会社の人間が育ってくれたほうが絶対効率がいい。だから余すことなく教えるし、年功序列もなくて、できる人がどんどんチャンスを拾って伸びていける環境にしています。
――結果的にそれで業績が30%上がるという数字に結びついているところがすごいですね。当たり前に見えて、すごく新しいことだと思います。
松岡 だから古いんですよね、職人の世界って。古くていい部分もたくさんあって、職人として絶対にやらなきゃいけない練習量とか、そのために使わなきゃいけない時間とか、その分量は決まっていると思うけど、一方で非効率なこともたくさんあります。たとえば年功序列というしきたり。若いうちから自分で作品をつくりたい子がいても、伝統的な家具職人の世界には、それを許す土壌がありませんでした。そんな閉鎖的な環境で、若い職人にどうやってモチベーションを上げろというのか?
つくりたい人はバンバンつくればいい。それが一番技術を伸ばす方法だと思うから。与えられた仕事だけでは覚えられない技術ってたくさんあって、たとえば自分で一からデザインして、「こういうものをつくってみたい!」という気持ちの中でものをつくっていくことも、そのひとつです。
KOMAでは、そうしてできた若い職人の作品も直営店で売るので、販売してお客様の手元に届くところまでを一人でやれる。こんなに成長に直結できるやり方ってないと思うし、それをやらないなんて非効率だと思う。会社の仲間が成長するためにできることは、何でもやっていきたい。そうしたら残業なんてする暇ねえなと。より効率的なことに時間を使ったほうが、絶対いいですからね。















