トヨタより大きい会社をつくりたい
塚原 僕は今、日本の伝統工藝を世界に橋渡しするKASASAGIという会社をやっています。うまく行っているとは思っていないし、この先もうまく行くかはわからないですが、「うまく行くだろう」と思ってやっています。それには二つ理由があって、ひとつはこの会社をつくるときに「トヨタより大きい会社をつくりたい」と思ったんです。
最初はIT起業家を目指してアメリカで挑戦したんですけど、アメリカ人と「よーいどん」したときに、これは勝てないと思った。「じゃあ何をやればいいんだろう」と世界の時価総額ランキングを見ていたら、トヨタよりLVMHのほうが時価総額が高かった。「どこでも目にするトヨタの車より、贅沢品や嗜好品のような、ハイブランドのバッグをつくっている企業のほうが時価総額高いんだ?」と思って事業内容を見ると、ルイ・ヴィトンというものづくりを筆頭に、ドンペリ、モエシャンという酒類販売の事業があった。
そこで日本を見返したときに、日本には伝統工藝があって、日本酒があって、「これは日本でもLVMHみたいな会社がつくれるんじゃないか。ドメスティックでIT企業を細々とやるぐらいなら、グローバルでものづくり企業をやったほうが、ネクストトヨタをつくるには早いんじゃないか?」と思ったんです。
そのアイディアを実証している会社が実際にフランスにあるんだったら、じゃあ日本のものづくりが負けるのかと思うと、別に負ける気はしなかった。「だったら僕ら、伝統工藝で時価総額50兆円行ってもいいんじゃないか」という信念の下でKASASAGIをやっているというのが、うまく行くだろうと思って続けている理由のひとつです。
もうひとつの理由は松岡さんをはじめ、いろいろな伝統工藝の職人さんにお世話になっているということ。物販サイトの頓挫など紆余曲折あったなかで、僕がやめなかったのは、やっぱりいろんな職人さんにお世話になって、「この人たちに恩返ししないと、人じゃなくなるような感じがする」という思いがあるからです。今やっていることをやめて、これ以外の道で生きていっても「良い未来」が思い浮かばないので、逃げずにやれているのはそういう理由かなと思います。















