ファンへの配慮と収益力の向上を両立させるライブの生配信

企業も推し活消費の拡大を背景として、ファンを大切にするという志向性が強くなった。

2026年はアイドルグループ「嵐」のラストツアーが予定されているが、チケットの申し込みは2025年6月2日以前にファンクラブに入会していること、という条件がついている。昔からのファンに配慮したものだろう。

このツアーは生配信も予定されており、古参のファン以外は動画での視聴が中心となりそうだ。しかし、生配信は回線がパンクしない限り視聴者の取り込みは青天井であり、数千円のチケットでも十分な収益を確保できる潜在性がある。

2019年6月、渋谷TSUTAYAに掲出された「5×20 All the BEST!! 1999-2019」の街頭広告(写真/読者提供)
2019年6月、渋谷TSUTAYAに掲出された「5×20 All the BEST!! 1999-2019」の街頭広告(写真/読者提供)
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つまり、チケット販売に条件をつけたことは、既存ファンを喜ばすだけでなく、収益面でも成功を収めるポテンシャルを持っている。

VTuberの「にじさんじ」は2025年にワールドツアーを実施したが、各公演のネットチケット販売が想定を上回る反響だったという。ANYCOLORの2025年8-10月のイベント事業の売上はおよそ5億円で、会社の上限予想の4億円を1億円以上も上振れた。

興行は人件費や資材費の高騰で採算が取りづらい状況だ。そうした中で、インターネットの視聴チケットは収益を押し上げる材料になる。

イベントの生中継を行なうライブビューイングという取り組みは20年以上前からあった。しかし、大衆に定着したのはコロナ禍を経て推し活の熱量が増したからこそのものだ。

推し活がビジネスの形を変え、新たな収益機会をもたらそうとしている。

取材・文/不破聡