人口減少か、人口増加か

人口は今世紀中にピークを迎え、その後は減少に転じると予測されている。

なかには、2100年には現在よりも人口が少なくなっているという見通しもある。この事実は、一度立ち止まって考えてみるに値する。農耕が始まってからおよそ一万年ものあいだ、人口は増え続けてきた。

歴史上、人口が大きく減少したことはほとんどなく、あったとしても、それは6世紀のユスティニアヌスの疫病や14世紀のペストのような、世界規模のパンデミックによる例外的な出来事だった。

現在進行中の人口減少は、ひとつの明確な原因に帰することはできない。いくつもの要因が絡み合っているものの、その相互関係はいまだ十分に解明されていない。

ポジティブな要因としては、この100年ほどのあいだに多くの地域で女性の地位が向上し、それが教育水準の向上、健康の改善、生活の質や平均寿命の伸びにつながっていることが挙げられる。

こうした変化は、過去2~3世紀にわたる科学と医学の進歩と深く関わっている。人口学で言う「人口転換」もこの流れの一部だ。

かつては多くの子どもを産むのが当たり前だったが、その背景には高い乳幼児死亡率があった。今では衛生環境や医療体制の向上、予防接種の普及によって、多くの子どもが無事に成人するようになり、子どもの数そのものが抑えられるようになったのである。

多くの国々で、一世帯あたりの子どもの数が減少した結果、ほとんど子どもを持たないという状況が広がり、高齢化が進んでいる。

科学と医学の進歩の先に待ち受けているのは……?
科学と医学の進歩の先に待ち受けているのは……?

世界の人口は依然として増加しており、今後数十年はこの傾向が続く見通しだが、やがて減少に転じると考えられている。混雑と混乱の20世紀と21世紀を経て、22世紀には人口が縮小する時代が到来するかもしれない。

その一方で、現在進行中の人口増加が引き起こす影響には、気候変動や生活環境の劣化がある。また、過密による社会的反応として、移住の増加といった動きも見られる。さらには、世界的に観察されている人間の精子数の減少のように、いまだ理由のわからない現象も含まれている。

ある意味で、人口の増加は歓迎すべきことでもある。経済や技術革新の推進力となるからだ。科学や産業の生産性は、豊富で拡大を続ける人間の知的資源に支えられている。そして現在、経済の健全性を測る指標であるGDPもまた、成長を前提としている。

とはいえ、いくら優れたものであっても、過剰になれば害にもなり得る。人口の増加も例外ではない。