「戦う覚悟」を共有することこそが求められている 

積丹町の問題は、トラブルから約1か月半が経過した後、副議長が猟友会の支部長に対して、直接謝罪。猟友会は11月13日、活動を再開した。

だが、この問題は、副議長個人の資質に留まらない。専門家である猟友会の善意と自己犠牲に依存し、その尊厳を軽んじる社会構造全体の問題である。

コロラドの老婆、ロシアの老人、日本の空手家たちが示した「個の覚悟」を、我々は「組織」として持つことができるのか。82歳の老婆が素手で示したのは、「敵はクマである」という明確な認識と、「即座に行動する」という覚悟である。

人喰いヒグマの脅威は、我々の社会が「序列」と「面子」という幻想から目覚め、現実の「脅威」に対峙できるかを問うている。町は謝罪し、「対応マニュアル」の策定を進めるという。

だが、マニュアルの文字を眺めている暇は、もうない。現場の専門家が誇りと安全を持って活動できる体制を再構築し、社会全体が「戦う覚悟」を共有することこそが、求められている。形式主義では、この戦争には勝てない。

文/小倉健一 写真/shutterstock