「明日、あなたは入閣なので準備をしておいてほしい」
ところが、前日までに漏れてきたのは、木原氏の官房長官や茂木氏の外務大臣など一部にとどまった。関係者に取材してみると、高市氏はその木原氏と相談し、総裁選で戦ったライバルたちの人事は早めに固めたが、それ以外はぎりぎりまで調整を続けたという。
ある新閣僚は20日の昼ごろに高市総理から電話がきた。「あす、あなたは入閣なので準備をしておいて欲しい」
入閣となれば、一生に一度の晴れ舞台かもしれない。モーニングなど正装の準備が必要だ。女性なら美容院の予約などもあるだろう。前日に入閣内定の電話はあったが、多くの閣僚はポストを教えてもらえなかったという。高市氏周辺はこう説明する。
「高市総理は直前まで調整を続けていた。一人で部屋にこもってやるので情報が漏れようがない」
一人で部屋にこもって組閣構想を練って、情報管理を徹底するのは小泉純一郎氏がまさにそうだった。ふたをあけてみれば、重要なテーマを女性閣僚二人に与え、ライバルをとりこみ、信頼できる側近も登用した。
憲政史上にようやく生まれた初の女性宰相
「一見、特徴も華もない人事に見えるが、彼女なりの意図も透けて見えるし、よく練られた人事だ」
自民ベテランの閣僚経験者も評価する。衆参で少数与党という厳しい船出だ。長年連れ添った公明党が離れて、新たなパートナーに選んだ日本維新の会は閣僚を送り込んでこない閣外協力にとどまった。
高市総理と吉村代表は「閣外でも連立政権だ」と言い張るが、学説的にも内閣をともにしないのだから連立とはいえない、「半身連立政権」だ。維新は自分たちに気にくわないことや自分たちの政策を呑んでもらえなければいつでも離脱するぞ、と脅してくるだろう。
憲政史上にようやく生まれた初の女性宰相。少数という不利な状況をどう打開していくのか。まずは12月までの臨時国会でその手腕が試される。
文/長島重治













