2次予選で会場を沸かせた注目のピアニスト

中国勢では、ティーンエイジャーの活躍が目立った。リュー・ティエンヤオ(Tianyao Lyu )は2008年10月21日生まれ。コンクールの終了した翌日に17歳になる。煌めく音と活き活きした音楽性、驚異的なテクニックの持ち主で、『アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ』や『ラチダレム変奏曲』のような難曲を苦もなく弾き、第3次予選に進出した。

2次予選のリュー・ティエンヤオ ©Krzysztof Szlezak /NIFC
2次予選のリュー・ティエンヤオ ©Krzysztof Szlezak /NIFC

ウー・イーファン(Yifan Wu)も2008年11月11日生まれの16歳。大曲が好きとのことで、『幻想曲』を深々とした情緒でまとめ、『アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ』も、圧倒的な技巧で自在な演奏を繰り広げ、聴衆の喝采を得ていた。

21歳のリ・ティエンヨウ(Tianyou Li) は頭脳派で、演奏されることが稀な『ソナタ第1番』を見事に構築して評価された。

韓国からは、2016年パデレフスキ・コンクール優勝で予備予選免除となった イ・ヒョク(Hyuk Lee)と弟のイ・ヒョ(Hyo Lee) が揃って第3次予選に進出。カナダからは、2023年ピリオド楽器のためのショパン・コンクールで優勝したエリック・グオ(Eric Guo)と、2023年ルービンシュタイン・コンクール優勝のケヴィン・チェン(Kevin Chen)が進出。チェンが第2次予選で全曲演奏した『練習曲作品10』は、完璧な技巧で大きな話題を呼んだ。2015年ショパン・コンクール第4位のエリック・ルー(Eric Lu)〈アメリカ〉とともに優勝候補と目される。

2次予選のイ・ヒヨ ©Wojciech Grzedzinski /NIFC
2次予選のイ・ヒヨ ©Wojciech Grzedzinski /NIFC
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一方で、前回のファイナリスト、中国のラオ・ハオ(Hao Rao)が早くも姿を消し、再挑戦のチャン・カイミン(Kai-min Chang)も前回同様第2次予選止まりとなり、ファンを悲しませた。演奏中のアクシデントで惜しまれつつ姿を消した16歳のジン・ズーハン(Zihan Jin)共々、捲土重来を祈りたい。

敬称略

※ショパン国際ピアノコンクールに出場している日本人以外のピアニストの名前はカナ表記の後にカッコ()で欧文を記載。本大会の演奏はYouTube:Chopin Institute( @chopininstitute)で視聴が可能。

https://www.youtube.com/@chopininstitute/streams

ショパン・コンクール見聞録
革命を起こした若きピアニストたち
青柳 いづみこ
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1,012円(税込)
新書判/256ページ
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