被災地で感じた自分の存在意義 

ホスト、セクシー男優、プロレスラー……無謀な挑戦を重ねていった松野は不調をきたし、うつ病を発症する。

「憔悴しきって日常生活もままならないときもありました。でも彼女は見捨てず、ずっとそばで手を差し伸べてくれて。3か月くらい(心療内科に)入院もしたんですが、お見舞いに毎日来てくれました。でも、どうしても心の不調から逃げきれなくて。アルコールで薬を飲んだりしていました」

そんな生活がたたり、2008年11月に松野は肝不全で倒れる。

「トイレから戻ってこない私のことを心配した田代がドアをこじ開けると、私は冷たくなっていたそうです。心肺停止状態で救急車で搬送され、医師からは“覚悟をしてください”と言われたそうです」

奇跡的な回復をとげるも、松野はアルコールからは抜け出せない。

「ほぼアルコール依存症でしたから。そんな中、東日本大震災がありまして。私たちが住む福島ではライフラインが止まりました。はっきり言って、お酒を飲んでいる状況ではなかったというのもあります。

でも、それ以上に被災地で無料のリサイタルをした際に、私の歌で元気をもらったといろんな方から言ってもらえました。自分にもまだできることがあるんだと思えて、あの日を境に、今日まで一切飲んでいません。心を入れ替えられたことで、休んでいたプロレスにも復帰できました」

現在も続ける歌手活動(写真/本人提供)
現在も続ける歌手活動(写真/本人提供)

やっと平穏な時間が訪れたのもつかの間、今度は田代が体調不良に。

「2021年です。コロナ禍でやっと診察してもらえたところ、顕微鏡的多発血管炎。全身の毛細血管を自分の抗体が勝手に攻撃する病気で、彼女の場合は腎臓に来てしまい。急速進行性糸球体腎炎(RPGN)となり、通常の1/5~1/6程度に腎機能が落ちました。ステージ4です」